日本屈指の3Pシューターとして、バスケットボール界を牽引してきた朝山正悟選手。一つのシュートに魅了され、そして突き詰めてきたスペシャリストが見る景色、そして思考。彼が語る現代のバスケットボールにおいての3Pシュートの重要性から、これからのバスケットボールのカタチが見えてきた。

常にチームのために自分ができることを模索しながらプレーするベテラン朝山正悟。

CSを戦い抜くにはもっとレベルアップが必要

(取材は2023年4月26日)—広島ドラゴンフライズとして初のチャンピオンシップ(以下CS)進出です。今シーズンを振り返っていかがでしたか?

 「CSに出るという一つの目標に向かって、自分たちが成長できたというのは大きいですね。1年間ほとんど同じようなメンバーでプレーできたということも大きかったですし、さらにカイ・ソットをはじめいろんな選手が加わってくれました。同じメンバー、そして新加入のメンバーの間でケミストリーが起こったと思うのです。自分が今何をやらなければいけないのかという共通認識や、自分の役割が何なのかということを、試合でより表現できるようになったことは大きな成長です。
 それにプラスしてディフェンスを強固にすること、しっかりとボールを動かしながら攻撃のバランスを取って試合をつくること、という点は具現化できていると思います。ただ、CSを勝ち抜きその先の優勝を目指していくとなると、もっとレベルアップしなければいけません。まずは接戦をモノにできる強さを身につけることが大切だと考えています」

—シーズンとCSとでは、全く違う戦いになるのですか?

 「全く違いますね。レギュラーシーズンは半年間の長い戦い、CSは上位チームがぶつかり合う短期決戦になります。CSを戦うためには、気持ちの部分が大切になると思います。『絶対に勝ちたい』という気持ちが、ワンプレーに対しての執着心といったことに現れてくると思います。
 バスケットボールでいう『50:50ボール』、空中にあるボールや転がっているボール、どっちのボールか分からないボールを自分たちがどれだけ取れるかといった点も重要になりますし、大きなミスをしないことも当然重要になりますので、レギュラーシーズンとは別物ですね。選手たちの熱い気持ち、逆にその気持ちが固いプレーにつながったり、そういったたくさんの要素がミックスされての戦いです。引き締まった試合になると思います」

—全てのプレーが常に全力での戦いになるということでしょうか。

 「レギュラーシーズンの全試合、みんなそういう気持ちで戦ってはいますが、やはりどこかで次の対戦相手のことを考えたり、次の日のこと、試合が終わってからのこと、家族のことだとかいろんなことを思い浮かべる瞬間があるはずです、人間ですからね。
 でもCSは、本当にここで負けてしまったら終わりという試合ですから、『絶対に勝ちたい。負けられない』といった気持ちが全面に出た試合になります。見る側にとっては、選手の顔つきが変わっていたり、より一層集中したプレーを見ることができるはずです」

—激しい戦いが繰り広げられるCSでの、朝山選手の役割は何だと感じていますか?

 「まずはベンチスタートになるとは思いますが、ベンチからゲームの流れや相手の状況をしっかりと把握し、コートに立った時にきちんと動けるように準備すること。ベンチに帰ってくる選手たちに、いろんなアドバイスを送ることですね。ぶつかり合いの試合になるので、自分たちが『良いバスケットをしている時間帯』を増やしたいのですが、相手に流れが向く時間帯が必ず出てくるのです。そういったタイミングで、僕のこれまでの経験でチームに貢献できるんじゃないかなって考えています」

—朝山選手がいるから安心してプレーに集中できると、チームの精神安定剤という役割なのかもしれませんね。

 「どうでしょう、そう考えてプレーしているとしたら、それはそれで問題かもしれませんね。ただ、ここまでのレベルに登り詰めてきた選手たちですから、それに頼り切るとかではなく、頭の片隅にそういう安心感があるだけでも違うのかなとは思います。そして自分がコートに立った時には、泥臭いプレーだったりそういうことを続けて、少しでもチームに良い流れや勢いをもたらすことができればと考えています」(Vol.02へ続く)

「広島アスリートマガジン」6月号は、「彼らがスペシャリストの理由。」チームを支えるスペシャリストたちの素顔と勝利への想いをお届けします!カープ・西川龍馬選手、戸根千明選手の独占インタビュー、そして広島ドラゴンフライズ・朝山正悟選手のインタビューもお見逃しなく。