チームの勝敗を左右する緊迫した場面でその名前がコールされると、球場が一気に盛り上がる「代打の切り札」。その存在はチームからの信頼と選手層の厚さを物語る。一打席で結果を求められる準備と、打席に立った時の集中力は、並大抵のものではない。今シーズン代打での驚異的な成績を残す松山竜平をはじめ、ここぞという一打席を任されてきたカープ歴代の代打の切り札を振り返ってみよう。

その集中力はチーム随一。一打席で試合を決める松山竜平にこの夏も期待したい

◆​自在のバットコントロールで、試合を決める

 今シーズン、チーム最年長となった16年目のベテランが代打の切り札として勝負強さを発揮している。1点を争うしびれる場面に登場すると、起死回生の一打で状況を打開。代打での打率は4割超、得点圏打率も3割超え、10打点以上を挙げる好調ぶりだ。5月11日の中日戦では、延長11回1死三塁の同点の場面で登場し、決勝打となる勝ち越しタイムリーを放った。翌12日の巨人戦でも、1点を追う9回に登場すると守護神の大勢からレフトへタイムリー。土壇場で同点に追いつき、2試合連続で大きな仕事を果たした。「代打・松山」が相手チームの脅威となっている。

●松山竜平(まつやま・りゅうへい)
1985年生、鹿児島県出身。鹿屋中央高-九州国際大-2007年大学生・社会人ドラフト4巡目-広島(2008〜)
【生涯成績】打率.281、909安打、82本塁打、6盗塁 ※7月6日現在の成績

◆ビッグレッドマシーンの切り札

右の大砲として期待された強打者。90年代後半から2000年代前半には代打としての出場機会が増え、通算成績397打数、90安打、71打点、打率.227をマーク。セ・リーグ記録でありプロ野球史上2位でもある、代打での20本塁打を放っている。4本の打満塁本塁打、9年連続代打本塁打はいずれも日本記録。

町田公二郎(まちだ・こうじろう)
1969年12月11日生、高知県出身。明徳義塾高-専修大-1991年ドラフト1位-広島(1992-2004)-阪神(2005-2006)
【生涯成績】打率.251、489安打、85本塁打、18盗塁

左足を大きく上げる特徴的なバッティングフォーム。子どもたちも浅井のマネをした

◆一発を秘めるアベレージヒッター

「他チームならレギュラー間違いなし」と言われた実力を持つ左の切り札。勝負強いバッティングで確実に結果を残し、代打で489打数154安打、8本塁打、93打点、通算打率はセ・リーグ歴代3位となる.315を記録している。袖をまくり上げ、鍛え上げた右腕を見せながら打席に入る姿を覚えているファンも多い。町田・浅井ともに強靭な肉体から放つ一撃で試合の流れを変えることができるパワーヒッターで、特に1996年の代打での打率はそろって4割を超えていた。

浅井 樹(あさい・いつき)
1971年12月14日生、富山県出身。富山商高-1989年ドラフト6位-広島(1990-2006)。
【生涯成績】打率.285、523安打、52本塁打、41盗塁

◆代打コールだけで、球場の雰囲気が一変

落合博満やイチローなど球界の数多くのレジェンドたちから打撃の天才と評され、選手生命を脅かされるけがに苦しみながらも2000安打を達成。現役晩年は代打での起用が増え、2012年は43打数16安打9打点、打率.333、2013年は11打数4安打4打点、打率.364という代打成績を残している。

前田智徳(まえだ・とものり)
1971年6月14日生、熊本県出身。熊本工高-1989年ドラフト4位-広島(1990-2013)。
【生涯成績】打率.302、2119安打、295本塁打、68盗塁

◆勝負強い打撃で、チームを鼓舞!

任されたポジションを器用にこなすユーティリティプレーヤーで、2014年には代打打率.389と大活躍。翌2015年の代打成績も62打数19安打、打率.380、1本塁打、15打点、出塁率.500と、驚異的な数字を残している。絶大なリーダーシップを発揮しながら連覇にも大きく貢献した。

小窪哲也(こくぼ・てつや)1985年4年12月生、奈良県出身。PL学園高-青山学院大-2007年大学生・社会人ドラフト3位-広島(2008-2020)-ロッテ(2021)
【生涯成績】打率.257、386安打、19本塁打、7盗塁