今シーズン、プロ12年目、34歳を迎え先発投手陣最年長となった野村祐輔。2016年に最多勝・最多勝率のタイトルを獲得した背番号19は、ここ数年、苦しいシーズンを送っている。

 6月29日(DeNA戦)に今季初となる先発のマウンドに登板した野村は、雨が降りしきるコンディションのなかでも6回安打3、無失点で復活をアピール。7月6日、今季2度目の先発を勝ち取った。

 ここでは、2020年に収録した野村祐輔単独インタビューを再編集してお届けする(初出は広島アスリートマガジン2020年11月号)。

2016年は25試合に先発し16勝。先発投手としての実績は十分だ。(写真は2020年撮影)

◆プロ9年目で初の開幕二軍。悔しさを糧に存在感見せる

 先発投手陣の大黒柱である野村祐輔にとって、2020年は決して納得のいくシーズンではないだろう。しかしながら、大瀬良大地、K・ジョンソンと主力の両先発投手を欠く状況が続く中で、チームの現役投手最多の通算77勝、最多勝の実績など、誰よりも先発として経験豊富な野村の存在は、カープ投手陣にとっては非常に大きな存在となっている。

 振り返れば2019年オフ、野村は国内FA権を行使せず残留することを決めた。就任直後の佐々岡真司監督(当時)からのラブコールもありカープ愛を貫いた。それだけに、2020年シーズンに懸ける気持ちは並々ならぬものがあったはずだ。

 しかし、キャンプ序盤に右ふくらはぎを痛めて一軍を離脱。いきなり出鼻を挫かれてしまった。懸命なリハビリを経て、3月に実戦復帰登板を果たす中で開幕が延期となり、当然開幕一軍と思われたが、本調子とは程遠いものだった。

 結果的にプロ入り9年目にして初の開幕二軍スタートが決定。2012年のルーキーイヤーから続いていた開幕ローテーション入りが途切れることになった。

「悔しいの一言ですね……」

 この時の心境を短い言葉でそう振り返る。コロナ禍の影響で開幕が遅れ、6月19日となったプロ野球開幕日、野村は由宇練習場での二軍戦で先発マウンドに立っていた。6回1失点とまずまずの投球を展開すると、その後5試合の先発登板を重ね一軍昇格の時を待った。

 そして開幕から約1カ月が経過した7月22日、待望の一軍復帰を果たし、甲子園球場での阪神戦で2020年シーズン初の先発マウンドに上がった。雨中での登板となったが、悔しさを胸に秘めてクールに阪神打線に立ち向かい、6回103球を投げて5安打1失点と好投。勝ち星こそ得ることができなかったが、野村の復帰は苦戦が続いていたチーム、そして投手陣にとって明るい材料となった。

 一軍に復帰して以降、先発ローテーションを守り続けた野村が最も印象に残っているというのが、7月29日にシーズン初勝利を挙げた登板だ。

「マツダスタジアムで、2020年初勝利をマークできた中日戦は印象的でした。あの試合は球数少なく、打たせて取る自分の投球ができたと思います。加えて長いイニングも投げることができて、自分が思う、理想的なピッチングができたんじゃないかと思います」

 シーズン2度目の先発マウンドとなったこの試合で、野村は丁寧にコースに投げ切りながら中日打線を寄せ付けず、5回まで一人の走者も出さない完璧な投球を展開。持ち味の打たせて取る投球と抜群の制球力で8回97球を投げて、わずか4安打無失点、しかも無四球という素晴らしい内容でその実力の違いを見せた。

 その後の野村は安定感ある投球を見せ続け、初勝利した登板を含めて5試合で3勝をマークし、4試合クオリティスタートを記録。安定した制球力と粘りの投球を展開し、苦しむカープ先発陣を支え続けた。

《プロフィール》
野村祐輔(のむら・ゆうすけ)
1989年6月24日生、岡山県出身/177cm、89kg/右投右打/投手
広陵高-明治大(2011年ドラフト1位)