粘り強い戦いでAクラスを推移する新井カープ。ケガ人が出るなかでもチーム一丸で戦う姿が印象的だ。ここでは、カープOB・笘篠賢治氏に、カープが優勝する上で、これからさらに重要な存在となる注目選手について語ってもらった。

笘篠氏が語る、後半戦に向け、攻守ともに活躍が期待される野間峻祥。

◆『がむしゃら』と『冷静』が必要

 最近のカープを分析すると、少し調子を落としていた秋山翔吾が本来の打撃を取り戻すまでは、バントを効果的に使って1点を取ろうという姿勢のように感じています。その中で、私が注目したのは野間峻祥です。二番を託されてつなぎの役割を果たしながら、主に一番を打っていた昨季のような本来の打撃に近づいています。

 二番打者の難しさは、シチュエーションにより、『1球待つ』『右方向に打つ』など、いろいろなことを考えることも必要となります。しかし『ノーサインであれば、無理に引っ張ろうとせず、レフト方向や三遊間方向でも良い』という割り切った考えで野間は打撃を展開しているように感じます。

 先日、野間にバントについて聞いたところ「めちゃくちゃ緊張します」と言っていました。私は「これから優勝争いをしていくにつれて、さらにプレッシャーがかかるシチュエーションが訪れる。そのときに備えて、バントに自信を持って決められるようにしておきたいね」というような話をさせていただきました。バントというのは『精神』が大きく左右するものです。どんな場面でも『俺は大丈夫だ』という自信を野間には持ってほしいです。

 現在の野間のプレーを見ていると、若い頃よりも落ち着きが出てきたように思えます。若いうちは、ただがむしゃらにプレーし、良くない結果につながってしまうこともあったでしょう。『がむしゃらさ』の中にも、要所で『冷静さ』が必要です。今はレギュラーとしての経験値も増え、冷静にいろいろなことを判断できているのではないでしょうか。

 その上で、現在の野間の課題としては、フェンス際の守備が少々慌てがちに感じるときもあるので、もっと落ち着いてプレーしてほしいです。遊び感覚でも良いので“捕らない”という練習を取り組むのも良いと私は思います。いくらプロといえども、ミスはどこかで起こるものです。私がカープのコーチ時代に『ミスを想定し、その処理をどうするか』という練習をしたことがあります。もちろんミスをしないことが1番ですが、練習からミスした際の動きが確認できていれば、試合中も冷静に処理できるはずです。

 前半戦がまもなく終了します。勝負の後半戦に向けて、野間のさらなる進化に期待したいです。 

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