その後の活躍は、野球ファンの誰もが知るところである。王子の3番打者として都市対抗野球に出場、社会人日本代表にも選出され、ドラフト5位でカープに入団した。

 入団当初から卓越した打撃技術が注目され、プロ3年目の18年には101安打をマークし主力選手の仲間入りを果たせば、19年には外野に転向し、27試合連続ヒットを含む159安打の活躍で、強力カープ打線の主軸を任されるまでに成長した。

 かつての反動で打つ傾向は皆無だ。ヘルメットの後ろに入り込んでいたバットの構えは修正され、最短距離でバットをしならせてくる。プロ入り後は揺るぎない信念で打撃技術を向上させ、もちろん年々体格も大きくなっている。

 「ここまで順調にいくとは思いませんでしたが、『ここまでいくのか!』といううれしい気持ちです。本人の努力もあるでしょうし、外野にコンバートしてもらって、チャンスをもらえたことも大きかったと思います。彼は、野球で勝負したい、チャレンジがしたいというタイプだったので、こうやってプロで野球がやれて本当に良かったと思います」

 今や、カープの顔というだけではない。天才的なバットコントロールで、プロ野球ファンはもちろん、選手仲間や関係者にも強烈な印象を残し、球界の顔になりつつある。

 「それでも、シーズンオフのたびに王子のグランドに来てくれます。そのたびに成長した姿を見せてくれるので、それはうれしいものですよ」

 プロ野球選手が巣立ったという事実だけが誇りというわけではない。グラウンドから巣立った男が成長を止めないこと。これこそが、指導者冥利なのかもしれない。

 また冬には、さらに大きくなった西川龍馬の姿を見せる。そのための日々のプロセスこそが、社会人のグラウンドへの恩返しになっている。