現在、J1リーグ暫定首位に立つサンフレッチェ広島。塩谷司、荒木隼人、佐々木翔が並ぶ3バックはリーグ屈指の守備力を誇る。中でも広島在籍10シーズン目の35歳、3度のJ1制覇に貢献してきた塩谷の存在感は際立っている。今季第2節のFC東京戦ではJ1通算200試合出場を達成。第3節の鳥栖戦では今季初得点を豪快なミドルを決めてホーム2連勝に大きく貢献した。
ここでは長年広島の守備陣を支え続ける塩谷が、過去に語った広島愛を改めて振り返る。今回は2021年に4年ぶりにアル・アインFCから広島に復帰した際の独占インタビューをお送りする(全3回・1回目/「広島アスリートマガジン」2022年1月号掲載記事を再編集)
◆〝試合のヒーローになるぞ〟という気持ちでプレーしている
―4年ぶりの広島復帰となりました。完全移籍の経緯について教えてください。
「以前からオファーをいただいており、日本に帰るなら広島だとずっと思っていました。帰って来ることができてうれしいです」
―11月27日のFC東京戦では復帰後初ゴールを決められました。ホーム最終戦で決められるとは、さすがです。
「前半12分の早い時間帯に先制できたのは良かったですね。あの後も試合をコントロールして勝てたら良かったのですが……。ただ久しぶりに、広島のサポーターのみなさんの前で得点を決めることができてうれしかったです」
―2021年シーズンは、勝ち切れない試合が多くありました。以前のように優勝争いにくい込めるような強い広島になるためには、何が必要だと感じていますか?
「まずは個人のレベルアップが必要だと思います。正直、予算を潤沢に使えるクラブではないので、そういう状況の中で優勝を狙おうとすると、今いる選手が、普段の練習から高い競争意識を持ちトレーニングを重ねレベルアップし、その上でチームとしてまとまっていくしかありません。2015年の優勝時は、移籍して出て行った選手よりも、新たに入ってきた選手の方が、よりチームにフィットしたから強かったと思います。残っている選手に、新加入選手が力を加えるという図式がピタリとハマっていました。あそこまでうまくハマるのはなかなか難しいと思います。まずは残留が最低限の目標になると思いますが、そのために勝ち点を重ねていき、どれだけ早い段階で残留を達成することができるか。達成したら、そこからは上位を狙っていけるので、シーズンの始め頃が大事になってくると思います」
―海外での経験を若手選手に伝える役目も期待されています。
「伝えるならメンタル的な部分かなと思います。個人の能力で考えると、日本人選手の方が高いと思うんですけど、海外の選手は勝負強さがあり、ここぞというときに一層力強いプレーをしてきます。大きな試合になると普段やっている以上の力を発揮してくるので手強いです。普段からそれをやれよって思うんですけど(笑)。大舞台で結果を出せるのが、海外で活躍する選手の強みだと思いますね」
―今の広島には決定力不足という課題があります。海外の選手のような勝負強さが必要なのかもしれません。
「広島の選手を見ていると、練習はすごくちゃんと取り組んでいます。でもそれが試合で発揮できないということは、メンタル的な部分に課題があるのかもしれません。一本、二本とポンポンと決まれば、そこから調子が上がってきたりするんですよね。プロの世界では、決め切ることができる選手は残っていくし、決め切れない選手は脱落していきます。その厳しい世界の中で、今の若い選手たちが、どう成長していくのかが楽しみです。決めるべきところで決めて活躍していく選手になってくれたら、広島のサッカーは、もっともっと楽しくなっていくと思います」
―塩谷選手はDFでありながら攻撃的なプレーが印象的です。もともと得点に対する意識が高いのですか?
「サッカーは、やっぱり点を取るのが一番楽しいです。 DFだから守備だけしておくのではなくて、チャンスがあれば上がっていって点を取りたい。〝試合のヒーローになるぞ〟という気持ちで、いつもプレーしています。攻撃の部分を評価していただけるのは、そういう意識の表れなのかなと思います」(続く)
《プロフィール》
塩谷 司(しおたに つかさ)
1988年12月5日生 徳島県出身/DF
■ クラブキャリア
2011〜2012 水戸ホーリーホック
2012-2017 サンフレッチェ広島
2017-2021 アル・アインFC
2021- サンフレッチェ広島