ダイナミックな投球とピンチに動じない姿で、リリーフとして存在感を増す矢崎拓也。2023年は離脱した栗林良吏に代わって守護神も務め、24セーブをマークした。ファンの期待と注目は高まる一方だが、自身は『目立たずに終わるくらいがちょうどいい』と語る。矢崎が胸に秘めた、リリーフの矜持とは。(全3回/2回目)

今季も試合終盤に登板する矢崎投手

僕たちは、目立たずに終わるぐらいがちょうどいい

─矢崎投手はここ数年、リリーフとして結果を出していますが、改めて『リリーフとして一番大事にしていること』を聞かせてください。

「もちろん、無失点で抑えることは大事だと思いますが、試合を壊さないというか、目立たないことでしょうか。僕は別に主役じゃなくていいと思っています。やっぱりチームが勝ったときの主役は、勝ちが付く先発投手や勝利打点を挙げた選手、ホームランを打った選手だと思うので。そういう展開で回ってきたときに、その人たちがそのままヒーローで終われるように。僕はスッと終わって、『なんかやったっけ?』ぐらいの方がいいと思っています」

─確かに、勝ち試合で7回や8回にリリーフ投手が出てきたときは無失点で抑えることが当たり前のように見られることが多くあると思います。そういう意味でも目立たないことが結果を残すことにつながっていると?

「そうですね。ヒーローがヒーローで終わるために、僕らは何事もなく試合を進めていく。個人的には、それがいいのではないかと思っています」

─それは初めて聞いた表現かもしれません。矢崎投手のポジションは、ピンチの場面もあれば試合終盤の大切な場面だもあると思いますが、どのようなやりがいや難しさを感じますか。

「やりがいについては、『信頼して出してもらっている』ことがすべてだと感じています。その場所で投げられること、それ自体がやりがいなのではないかと思っています。結果よりも、マウンドに上がっていること自体が一番の報酬だと思うので。難しさという意味では、どのポジションもすべて難しいところなので比べることはあまりないのですが、比較的長いイニングを投げる先発とは違って『この1点はあげてもいい』という場面が少ないところでしょうか。3〜4点差がついた展開での1点は別ですが、リリーフは特に、『点を与えたくない』『与えてはいけない』ポジションだと思っています。1点の重みが大きいですし、成績にも大きく影響しますから、そういった面の難しさはあると思います」

─昨年から、栗林良吏投手、島内颯太郎投手と試合終盤を締めるケースが増えています。栗林投手はシーズン中も矢崎投手からさまざまなアドバイスをもらうことがあるとコメントされていました。後輩投手から頼りにされる存在だと思うのですが、どのような思いで後輩選手たちと接していますか?

「僕は『栗林が抑えたからがんばろう』と思うことはあまりないです。ただ、栗林と島内だけでなく、ブルペン全員が自分の力を最大限発揮できることがチームとして良いと思いますし、みんなが力を発揮して競争する中で誰が登板するかを決められるのが強いチームだと思います。『誰が行っても抑えられるけど、今日はたまたまこの投手』というぐらいが一番強いチームではないですかね。そういう意味では、栗林などには僕が感じた『こういうふうにやってもいいんじゃない?』みたいなことを言ったりはしますが、それは僕が言ったから結果が変わったというわけではなく、本人たちの力ありきだと思います」