2024シーズン開幕直後、まさに異例のタイミングで、サンフレッチェに電撃加入を果たした新井直人。広島デビュー戦でさっそくゴールを決めると、瞬く間に攻守両面でチームにとってなくてはならない存在になった。さらなる高みを求め、大いなる覚悟を抱いて広島へ……新井直人の内面に迫った。(全2回・第1回)
◆自分から積極的にチームの輪に。コミュニケーションを意識した
—今季は開幕後の3月21日に、完全移籍でのサンフレッチェ加入が発表されました。オファーが来てから移籍を決断するまでの期間は、どのくらいだったのですか。
「1週間くらいです。最初は悩んでいましたが、実際にクラブの方に会って話をしてみないと、という思いもあり、具体的なイメージが湧いていなくて。その後に強化部の方と会って話をして、ミヒャエル・スキッベ監督ともオンラインで話をしました。そこから移籍を決断するまでは2〜3日です」
—スキッベ監督とは、どんな話を?
「監督からは、『来てほしい』と思いを伝えてもらいました。なるべく僕が緊張しないように、いろいろと話してくれたことを覚えています」
—移籍を決めた数日後に、サンフレッチェに合流したそうですね。
「移籍を決めた日は新潟の練習がオフだったので、オフ明けの翌日にチームにあいさつしてから、昼に広島へ向かいました。その翌日の午前中にサンフレッチェで初めて練習して、午後に加入会見です。そのときは、とりあえず当面の衣類とシューズだけ持ってきて、引っ越しは奥さんや奥さんの家族にサポートしてもらいました」
—2021年に新潟からC大阪に移籍して以降、今回で4年連続の移籍となりました。珍しいケースだと思いますが、移籍に慣れてきた面もあるのでしょうか。
「すべてが自分主導ではないので、毎回やっぱり苦労はしていて、慣れることはないです。ただ、こうやって毎年オファーをもらえる、声を掛けていただいているのは、選手としてうれしいことでもあります」
—加入後初の試合となったJ1リーグ第4節・G大阪戦(3月30日・△1−1)で控えメンバーに入り、75分から出場して、その3分後に同点ゴールを決めました。過去の移籍の経験を踏まえて、新しいチームになじむために意識したことはありましたか。
「最初に移籍した2021年と比べると、自分から積極的にチームの輪に入るようにしました。チームの色もあるので、それにどう合わせていくか、新しいチームで自分をどう出していくかは、移籍を重ねることで学んだと思います。荒木隼人選手は同い年で自然と親近感が湧くので、そういう選手から情報を得る一方で、やっぱりチームをつくってきたのはベテランなので、そういう選手にも積極的に声を掛けて、コミュニケーションを取ることを意識しました」
—ただ、その後も途中出場が多く、先発出場した試合でもハーフタイムで交代となるなど、なかなか定着できませんでした。
「100パーセントのプレーを出せていないのは自分でも分かっていました。当然、もどかしさはありましたね」
—開幕直後の移籍で、新潟のファン・サポーターから厳しい意見もありました。影響はありましたか。
「特に意識はしていませんでしたが、影響は完全にゼロではなかったと思います。ああしたタイミングでの移籍で、周りの声に少し影響されていたのかなと思いますし、少し守りに入っていたのかもしれないと、いまになって感じています」
—5月19日のJ1第15節・京都戦で5試合ぶりに先発出場し、右足・左足・ヘディングでゴールを決めるハットトリックの大活躍。5−0の勝利に貢献したのをきっかけに、スタメンに定着しました。
「当時リーグ戦で6試合未勝利だった(2分4敗)ことを考えると、アグレッシブさが足りないのでは、と感じていました。京都戦で先発することになった前節までの控え選手は、みんな勝ちに飢えていたので、そういう部分は間違いなく必要だろうと。得点やアシストは自分一人ではどうにもできないですが、勝利への執着心は、チームが勝てていないときにベンチに座っていると、より強くなるものだと思いました。
—前節までの控えから京都戦で先発することになった選手同士で、試合前に何か話し合ったりしたのですか。
「『やってやろう』というような声は、自然と掛け合っていました。でも、その前に顔を見るだけで分かり合えていましたね」
(後半へ続く)