過密日程を戦い抜き、リーグ戦で再び首位に浮上したサンフレッチェ広島。2位・町田とは勝点で並んでおり、得失点差で首位に浮上した。ここではOB・吉田安孝氏が注目選手をピックアップして解説。(取材は2024年9月上旬)
選手の入れ替わりが激しかった今夏のサンフレッチェ。新たに獲得した選手たちもさっそく活躍してくれていて、頼もしい限りです。注目したい選手ばかりの今年のサンフレッチェですが、今回は2選手の名前を挙げてみたいと思います。
まず一人目は、いまやサンフレッチェのDFラインに欠かせない存在となった中野就斗です。本職であるCB以外にも、さまざまなポジションで結果を残している中野ですが、彼にとって大きなターニングポイントになった試合は7月5日の神戸戦だったのではないかと思います。中野のストロングポイントの一つである 『1対1の強さ』が、神戸のFW・大迫勇也とのマッチアップではなかなか思うように発揮できていませんでした。中野自身も、それまでにない感覚を味わったのではないかと思います。体が当たっても全く怯まない大迫勇也のような選手と対戦したことで、彼の意識もより高まったのではないでしょうか。クラブ記録となる7連勝も達成しましたが (9月6日時点)、チームにとってもこの神戸戦はひとつのターニングポイントだったと思います。
そしてもう一人は、この夏に加入したばかりのトルガイ・アルスランです。
7月末にチームに合流すると、8月7日の東京V戦でデビュー。11日にホームで行われたC大阪戦ではいきなり2得点を挙げる活躍で、あっという間にサポーターの心をつかみました。出場時間、放ったシュート本数を考えても、クオリティの高さは誰もが認めるところです。また、シュートだけでなく中盤でのボールの受け方も非常に巧みで、周りの選手たちをよく見ていることがわかります。相手DFをいなすような、ゴール前での冷静さも素晴らしいですね。
こうした夏の補強を見ていても、『必ずタイトルを獲りにいく』というクラブの本気度の高さが感じられます。これまで課題だと言われていた決定力の面も改善されてきていますし、守備の面でも引き続き抜群の安定感を発揮してくれています。1点を取った後でも、2点、3点を取りに行くんだという姿勢がチーム全体に見られるので、相手チームにもプレッシャーを与えることができているのだと思いますし、スタメン選手だけでなく、ベンチを見ても実力ある選手たちが控えています。全体の雰囲気も非常に良いですし、試合に出ている選手も、そうではない選手も、ベテランたちも若い選手たちも、一体感を持って試合に向かっている印象です。
ここからリーグ戦のほか、海外への移動も伴うACL2など過密な日程が続きますが、今年のサンフレッチェならきっとタフに戦い抜いてくれるでしょう。