過密日程を戦い抜きながら、リーグ戦で優勝争いを繰り広げるサンフレッチェ広島。現在、首位神戸と勝ち点3差の2位につけ、残り2試合での逆転優勝に向けて、正念場を迎えている。ここではOB・吉田安孝氏が注目選手をピックアップして解説する。(取材は2024年11月上旬)
◆『広島らしさ』あふれる生え抜き選手。サポーター、クラブからの期待も大きい
シーズンも最終盤を迎えて負けられない試合が続くなか、選手たちは対戦相手だけでなく、大きな重圧とも戦っているように見受けられます。
もちろん、1試合1試合、平常心で向き合っているはずですが、まったく意識をしないかというとそういうわけにもいかないでしょう。これまでであればゴールが決まっていたであろう場面でも、なかなか決まらない……という試合もありました。やはり、選手たちにも目に見えないプレッシャーがかかってきているのだと思います。
ただ、2013年のJ1優勝時も残り2試合を残して首位に勝点差5をつけられていましたが、そこをひっくり返して最終節で優勝を決めました。今シーズンも、まだまだ何が起こるか分かりません。幸いなことに、サンフレッチェには青山敏弘をはじめ、優勝経験を持つ選手も所属しています。そうした選手たちの経験値も頼りにしながら、残りの試合を戦ってもらいたいと思います。
痺れる試合が続く中、今回、注目選手として取り上げたいのは川辺駿です。
広島出身の川辺はJr.ユースから広島でプレーし、ユースを経てトップ昇格を果たした生え抜きの選手。ヨーロッパのクラブを経験し、今年8月、4年ぶりにサンフレッチェに復帰しましたが、一回りも二回りも大きくなって戻ってきてくれました。
クラブがこのタイミングで川辺を獲得したことには、大きな意味があると感じています。優勝請負人として、ファン・サポーターからの期待も大きいに違いありません。
川辺は主にボランチとして起用されていますが、彼の良さの一つには、前に向かっていく推進力があります。2列目、3列目からどんどん前への推進力を上げて、 攻撃に厚みを持たせてゴールに絡む、アシストをする。そういった場面でも力を発揮できる選手です。ここから先、サンフレッチェというチームの核となる存在になっていってもらうためにも、クラブ、ファン・サポーターの期待に応えていってもらいたいと思います。まだまだプレッシャーのかかる難しい試合が続きますが、そんな時こそ、プレーの面での役割はもちろん、ゴールやアシストといった数字の上でも結果を残してくれることを期待しています。
10月には、広島一筋で21年プレーした青山が今シーズン限りでの現役引退を発表しました。川辺にはその青山の後継者としての期待もかかっているはずです。タレントぞろいのサンフレッチェのなかで、より一層、チームの柱として活躍していってもらいたいですね。
彼はサッカーに対しても非常に真摯に向き合っていますし、賢さも持ち合わせている、実に『広島らしい』選手です。今シーズンだけでなく、ここから先のサンフレッチェを担っていく選手の一人として、注目していきたいと思います。