カープが3連覇を果たした2016〜2018年、精神的支柱としてチームを支えた新井貴浩氏。短期連載の最終回となる第4回目では阪神移籍後も感じていたカープへの愛着、そして感動の25年ぶりの優勝のシーンなどを振り返っていく。

後輩選手たちからも慕われ、惜しまれながら2018年限りで現役を引退した新井貴浩氏。現在はプロ野球解説者として活躍中。

◆離れていてもカープが好きだった

 本塁打王を獲得した2005年以降、僕はレギュラーに返り咲き、主に4番として試合に出るようになっていました。ちょうどその時期、投手陣のリーダー的存在が黒田博樹さんでした。

 あの頃、チームの立場としては黒田さんがエースで僕が4番。お互いに投打の主力として自分の事よりもチームの事を考えるようになっていました。そして黒田さんと一緒に食事に行く機会が増えたのもこの時期です。そこではずっとチームの話、野球の話をしました。チームとして低迷していた時期だったので、「投手陣と野手陣がバラバラだったら絶対に勝てない。チームとしてまとまって戦っていかないと、自分さえ良ければ良いという考えであれば、カープというチームは絶対勝てない。だから俺たちで変えていこう」と、そういう話を2人でよくしていました。

 ですがその後、僕は阪神へ移籍して7年間カープと対戦することになりました。改めて外から見ていて、カープというチーム自体がアットホームで暖かいチームだなと感じさせられました。たとえるならば、親元を離れて改めてその良さが分かったと言えるかもしれません。

 2014年オフには、黒田さんと同じタイミングでカープに復帰することになりました。まさか『帰ってこい』と言われるとは夢にも思っていなかったですよね。僕はカープに帰りたいと思っていましたが、『でもお前は帰っちゃだめだぞ』と考えるもう一人の自分もいてすごく悩みました。でも、最終的にはやっぱりカープが好きだったんです。その気持ちが勝ちました。そこは一貫して持っていました。