今シーズン、東アジアスーパーリーグの激闘を制し王者に輝いた広島ドラゴンフライズ。広島駅前に『新アリーナ構想』も持ち上がり、コート内外で注目を集め続けている。2016年から社長としてクラブ運営に携わる浦伸嘉社長に、これからの展望を聞いた。(全2回/第2回)
◆EASLを制し王者に輝くも、挑戦者として挑んだリーグ
—今シーズンのクラブについてお伺いします。東アジアスーパーリーグ(EASL)では優勝を果たし東アジア王者に輝きましたが、海外遠征もあり、タフな日程が続きました。
「なかなか全てがうまくいくとは思っていませんが、やはり海外の遠征を含む連戦を戦うなかで、予想通りケガ人が出てくるなど課題はあったと感じています。ただ、常に良いコンディションでいることは難しいですし、たとえケガ人が出てもすぐにリカバリーできる、リカバリーするための準備ができるかどうかが重要です。強豪と呼ばれるクラブは、そうした部分が常にしっかりとリスクヘッジできている、『総合力』があります。我々は昨年リーグ優勝を果たしましたが、クラブの力自体はまだまだトップクラスの他クラブに比べると及ばない部分があると感じています。これは、ここからさまざまな経験をしながら積み上げていくものになると思いますが、昨年優勝したことで上がった周囲からの期待に応えるためにも、クラブとしてもっと成長していかなければならないと感じているところです」
—昨シーズンからの違いというと、選手の移籍やヘッドコーチ(HC)の入れ替わりもありました。
「朝山(正悟)HCは選手を引退してすぐにコーチ就任ということでもありましたから、急に全てがうまくいくとは考えていませんでした。ただ、僕が朝山HCの最大の武器だと捉えているのはその『統率力』です。その点は十二分に発揮してくれていたと感じています」
—統率力とは、具体的にどのようなイメージでしょうか。
「チーム、選手を『まとめる力』ですね。特にプロのチームでは、負けが多くなるとどうしても衝突が起きてしまったりするものです。ですが、朝山HCはその部分をうまくまとめて選手たちを良い方向へ導いてくれているように思います。極端な例ですが、戦略や戦術はアンマッチであれば変えれば良いだけの話です。ですが、統率力は得ようとして得ることができるようなものではありません。組織、チームを率いるために大切なものが自然と身について、発揮されている。朝山HCの魅力の一つにはそういうところもあると思います」
—今シーズンは序盤に苦しみましたが、離脱していた選手たちが合流してからは勝点を積み上げることもできました。
「そうですね。序盤の連敗と、ケガ人が出ていた期間の負けが響いてはいますが、限られた戦力のなかでよく粘ることができたのではないかと思います。これはバスケットボールに限らずすべてのスポーツに共通していると思うのですが、やはり重要なのは『守り』です。企業経営も同様に、経理、財務、管理、人事など守りの部分がしっかり機能して全体をコントロールできていれば、大きく崩れることはありません。昨シーズンはリーグ優勝を果たしましたが、西地区を制した結果ではありません(2024ー25シーズンはワイルドカードから勝ち上がって優勝)。確かにチャンピオンシップでの広島には勢いがありましたが、総合的にトップクラブの仲間入りを果たせているかというと、そうした印象はまだまだ薄いのではないでしょうか。例えば琉球ゴールデンキングスは昨シーズン7連覇がかかっていました。結果として連覇とはなりませんでしたが、こうなると、優勝してもしなくても誰もが『琉球は強豪クラブ』という印象を持ちます。我々はまだまだそこまでは到達できていないと感じていますし、だからこそ、なんとかそういう状況に持って行きたいとも思っています。これからも常にチャレンジャーとして、慢心することなくやっていきたいです」
■浦 伸嘉(うら・のぶよし)
1980年10月1日生、広島県出身
株式会社広島ドラゴンフライズ代表取締役社長
2004年に広島県代表として国体選手に出場し、翌年のbjリーグ開幕とともに新潟アルビレックスBBへ。PG(ポイントガード)として新潟、福岡などで活躍した。2007年に引退し、2016年から広島ドラゴンフライズの社長を務める。