連覇を目指しスタートした今シーズンは、西地区5位に終わった広島ドラゴンフライズ。一方で初の海外リーグ参戦を経験するなど、タフな日程のなかでも果敢に戦い抜いた。クラブ初となる東アジア王者に輝いたチームをコート内外から鼓舞し、けん引してきた若きキャプテン・上澤俊喜が、2024-25シーズンを振り返る(全2回/第1回)
◆追い求める理想は、『常に強いチーム』
—まずは2024ー25シーズン、お疲れさまでした。西地区5位、チャンピオンシップ出場も逃すという悔しい結果に終わってしまいましたが、チーム全体を振り返って、どんなシーズンだったと感じていますか。
「目標としては、リーグ、天皇杯、東アジアスーパーリーグ(EASL)とどの大会でも優勝を目指していたので、思い描いていた結果からは程遠い結果になったと受け止めています。ケガ人の離脱もあり、なかなか全員がそろってプレーできない期間もありましたし、良い時は良くても悪い時は悪いという波もありました。『常に強いチーム』をつくり切れなかったと感じています」
—今シーズンはEASLもあり、海外アウェイとの行き来もありました。非常にタフな日程だったと思いますが、やはり大きな影響がありましたか。
「そうですね。言い訳にはなりませんが、EASLは初めて戦うリーグでしたし、国内のBリーグと並行しながらその間にスケジューリングされていたので、移動や環境の面ではタフだったと思います。細かいルールも異なりますし、そういった部分にアジャストしていく大変さもありました。ただ、僕個人としては学べるものもたくさんありましたし、楽しくバスケットができたと感じています」
—『学べるもの』というと、具体的にどのようなものですか。
「Bリーグとはまた違う、相手の力が未知数のチームと対戦するなかで『未知数の相手とどう戦っていくか』という、海外で試合をするための準備の仕方などを全員で経験できたのは大きかったです。チームはもちろん、
僕自身も初めての経験だったのですが、試行錯誤しながら試合に臨むのは、疲れるというよりも、常に思考し続けて楽しむことができたと感じました。コート以外の部分で学べたものはたくさんあったと思います」
—上澤選手が、BリーグとEASLで最も違いを感じた部分はどこでしたか。
「Bリーグと比べると『チーム全員が動ける選手』という印象を受けましたし、やはり手の長さ、足の長さといった身体能力の差も感じました。そんな相手に対しては、守り方や攻め方を変えていく必要性がありました。逆にBリーグの方がディフェンスのプレッシャーやインテンシティの高さはあると感じていたので、EASLとBリーグの両方で戦ったことで、プレーの幅も広がりましたね」
—国内リーグと海外リーグの差を感じながら戦ったことで、チームとしてもできることが増えていったということでしょうか。
「そうですね。あとは、海外という“どアウェイ”のなかでプレーする経験ができたことも良かったのではないかと思います」
—完全アウェイのなかで戦うのは、難しさの方が大きいのではないですか?
「相手にとって僕たちは、アウェイに乗り込んできたいわばヒール役です。その空気感が逆に『やってやろう』というモチベーションにつながりました。厳しさをモチベーションに変えて戦えたからこそ、優勝をつかむことができたと感じています」
—モチベーションの重要性を改めて感じたのですね。
「はい。昨シーズン優勝した時もそうでしたが、『もう負けられない』と感じることで自ずとチーム全体の雰囲気も良くなりますし、選手一人ひとりが『やってやろう』という気持ちにもなっていました。心ではそう思いながらも試合ではしっかり自分たちのバスケットができたのは、そういった気持ちがあったからこそです。その結果、接戦のなかで相手よりも一歩上に出ることができたのだと思います。特にEASLでは、いままで短期決戦を勝ち抜いてきたなかでも一番そういうモチベーションを感じられたと思います」
(後編へ続く)