ここまで24試合を終えて、13勝3分8敗で5位に位置しているサンフレッチェ。リーグ戦は首位と勝点4差、カップ戦、天皇杯も順調に勝ち進み、タイトル獲得に向けますます期待が高まっている。ここではクラブOB・吉田安孝氏が、4年ぶりの代表復帰を果たした注目選手について解説する。(全2回/第2回)
◆離脱選手が続々戦列に復帰。層の厚さを活かして上位争いへ
この岡山戦でプレーの安定感が光っていたのが、DFの塩谷司です。やはりレベルが一段違うという印象を受けました。
最終ラインからのビルドアップ、縦につけるパス、相手の裏をつくパスなど、プレーの一つひとつに意図があり、パスの受け手に向かって 「こういうプレーをしてほしい」というメッセージが込められているように感じます。これらはさりげないプレーかも知れませんが、技術の必要なプレーでもあります。そうしたプレーの一つひとつのクオリティが群を抜いている。それが塩谷の素晴らしさだと思います。塩谷と川辺駿のふたりは、攻守に渡って高いレベルのプレーでチームに貢献してくれているといえるでしょう。
そして、復帰がチームにとって大きなプラスになっているもうひとりの選手が、田中聡です。彼がいることで高い位置でボールを奪うことができますし、よりラインを上げて戦うことができます。相手にプレッシャーをかけ、前からボールを奪ってショートカウンターという、サンフレッチェらしい攻撃が生まれる可能性もあります。田中聡の復帰による、そうした攻撃バリエーションの変化も楽しみにしたいと思います。
そして、中島洋太朗の復帰もチームにとっては非常に大きなプラスになっています。中盤のポジション争いはますますし烈になっていくことが予想されますが、タイトルを狙いにいくためにも、層の厚さは絶対に欠かせません。
さらにここからの期待をお話するならば、個人的には、さまざまな強み、特徴を持つ選手たちをうまく起用しながら、対戦相手や試合の時間経過に合わせてフォーメーションを組み替えるなど、臨機応変な試合展開があっても面白いのではないかと感じています。昨シーズンは夏場以降に勝利が遠ざかり、結果的にリーグタイトルを逃してしまったという結果になりました。あの苦い経験を踏まえ、クラブも、チームも、選手たちも、ここからが本当の勝負だということはわかっていると思います。
ケガ人も戻り、選手層も厚くなりました。厳しいなかでも勝ち切ることができた岡山戦は、選手たちにとっても自信になったはずです。
先ほど、塩谷と川辺のプレーの質の高さについてお話ししましたが、川辺のファールを犯さずシュートまで持ち込む技術の高さは、やはり今のチームの核になっているといえるでしょう。カバーリングや最前線に上がって豪快なシュートを放つなど、攻守において中心となっていることは間違いありません。相手に抜かれそうなところでもしっかりとついていき、難しい局面でもチャレンジし、ノーファウルでボールを奪って攻撃に転じる。守備で危険な場面の芽を摘むだけでなく、ピンチからチャンスへの切り替えを一人で担っています。そうした点を求められて、E−1でも久しぶりに代表に選出されたのだと思います。
今シーズンのJリーグは非常に混戦で、最後の最後までどこがタイトルをつかむかがわからない状況です。サンフレッチェにもまだまだ十分にチャンスはあります。
まずは昨シーズン苦しんだ夏をどう乗り切るか。選手の起用やコンディションのケアも含めて、どう順位を上げていくかに注目したいと思います。