中学硬式野球の日本一を決める第3回エイジェックカップ中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズは、東海中央ボーイズ(愛知)の優勝で幕を閉じた。

 平日開催の大会ということもあり、スタンドの中心は保護者だった。有名プロ野球選手の応援歌はもちろん、中畑清(元巨人)や西武時代の清原和博といった、保護者に馴染み深い選曲も目立つ。一方で、「青のプライド」「チャンス紅陵」「サンバ・デ・ジャネイロ」など、直近の高校野球のトレンドもしっかりと反映されており、そのアンテナの鋭さには驚かされるばかりだ。しかし、スタンドの一角には違う色の集団の姿もあった。

オール岡山ヤングに声援を送る世田谷西リトルシニア

◆「昨日の敵」を応援する友情応援

 今大会で特に印象的だったのは、「友情応援」だ。各チームの応援席の一角には、異なるユニホームを着た選手たちの姿が目についた。

 開幕試合のオール岡山ヤング対世田谷西リトルシニアの試合には、地元の栃木ヤングと栃木下野リトルシニアがエイジェックスタジアムに駆けつけ、自団体の代表チームに声援を送った。試合後には彼らの主導でエール交換まで行われ、「5団体の決戦」であることを強く印象づけた。

 決勝戦でも、この「友情応援」はさらに熱を帯びた。三塁側の東海中央ボーイズに敗れた佐賀フィールドナインは三塁側スタンドに、一塁側のオール岡山ヤングに敗れた世田谷西リトルシニアと高崎中央ポニーは一塁側スタンドにそれぞれ座り、熱い声援を送った。

 一日前、彼らは敗者だった。試合に敗れた選手たちは、敗退の悔しさから泣き崩れた。それでも、自分たちを破った相手に声援を送ったのはなぜだろうか。

 溢れるほどの悔しさ、そして敵への応援。それは、彼らが全力を尽くした証だ。同時に、各団体の選手権を制覇した強豪たちが持つ「強さ」がそこにはあった。

 ライバルへのリスペクト、そして心から野球と楽しもうとする彼らの姿勢こそ、今大会が示した一つの価値と言えるだろう。