1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。
第2回目の特集は、カープ歴代監督のインタビューセレクション。
ここでは、野村謙二郎氏の監督就任初年度に収録したインタビューを再編集して紹介。現役時代はチームリーダーとしてナインを鼓舞し、引退後も優しく、ときには厳しくカープへの提言を続けてきた野村氏が、低迷を続けるチームの新指揮官として語っていた言葉をお送りする。(『広島アスリートマガジン2009年12月号』掲載記事を再編集)
◆「全てを変えなければいけない」
— ファンにとっては待望の野村新監督就任となりました。監督業に対しては以前から興味をお持ちだったのですか?
「監督という仕事は自分にとって初めてですし、それまでは特に監督になることを強く希望していませんでした。監督業についてあまり深く考えたことはなかったのですが、僕よりも周りの方たちがそういう話をされていて、自然と考えるようになっていきました。そして実際に監督就任の話をいただいたときに、今まで以上に現実的に考えるようになったんです。
もしかしたら『野村は監督をすごくしたかったんだろう』と考えている方が多いかもしれませんが、監督というのは大変な仕事です。自分に務まるかな、という思いがありましたし、どういう野球をするべきか、自分の考える野球をそのまま押しつけていいのか、チームに入ると自分の現役時代の頃のチームとどう変わっているのかなど、いろんなことを自分でシミュレーションしました。その中でやっと決断しました。球団から話をいただいて、引き受けたからにはもうやる気満々になりましたし、ユニフォームを着たからにはカープを強くするために、そして勝つために自分が持っている力、ノウハウを全力で注ぎ込もうと思っています」
— 理想の監督像というのはイメージとしてありますか?
「どんな人も子どもの頃はお父さんやお母さんから怒られたと思いますが、大人になって自分の子どもを育てるときに、全然違う育て方をする親っていないと思うんです。子どもにかける言葉にしても、『あ、俺お父さんやお母さんと一緒のことを言ってるな』と感じると思いますし、子どもにとって嫌なことも言わなければいけない。でも、そこで初めて親の気持ちが分かるんだと思います。
僕らにとってお父さん、お母さんというのは歴代の監督であり、コーチなんです。やはり教えていただいたことが自分のスタンスになりますし、それが伝統というものではないでしょうか。今はそういう心境ですね」
— では、「カープの伝統を引き継ごう」と強く思っていらっしゃるというよりは、自然とそうなるということですね。
「そうですね。本当にカープが強かったとき、優勝しているとき、常にAクラスにいたとき、僕も選手としてそのチームにいましたが、そのときに受けた指導で結果が出ている。そういう意味では、そのときの野球を目指していけば間違いはないと思っています」
— 今のカープは12年連続Bクラスという状況にありますが、やはりチームをつくる上でその原因は探っていかなければいけないところですね。
「全てが原因と言えると思います。走攻守、そしてチームプレー、考え方。結果が出ていないんですから直すところを挙げればキリがないですし、全てを変えなければいけません」