◆「レギュラーのレールに乗る」

— いわゆる〝カープ野球〟とはどのようなものだと考えていますか?

「やはり〝つながりとスピード〟ですね。どの解説者の方も感じている部分ではないかと思います」

— このキャンプでは守備・走塁などそういった要素に関して意識付けが進んでいたように思います。

「意識付けという言葉をよく使いましたが、その言葉が一人歩きするようになってはいけません。技術を求めながらの意識付けなんです。意識だけするというのは、例えば野球選手じゃなくてもできる。技術を含めた中での意識付けをして、体で表現できるようにしなければいけません」

— 18日間の日南秋季キャンプでしたが、振り返ってみていかがですか?

「選手が本当によく頑張ってくれて、ほぼ倍以上、三倍近い練習になったのではないかと思います。動いている量、バットを振った量、走った量で言えば、ずいぶん多くの練習量を課しました。その中で選手たちは本当によく頑張ってくれました。ただ、それは自分たちのチームとして頑張ったということに過ぎないし自己満足であって、他の11球団も頑張っているんです。そこで争うわけなので、決して満足はしてはいけません。

 僕が今キャンプのテーマに挙げた〝もう一人の自分に勝つ〟というのは、自分の中に〝妥協する自分〟が出てきたときに、どうやったら勝てるかということ。『ああ、もうここでいいかな』と思うときに、もう1球振る、もう10球振る、もう50球振ることによって、精神的にも強くなるし、それが技術的な向上にも繋がっていきます。

 キャンプ中の練習試合のときだったと思いますが、いい話を聞きました。試合に出ずに残留していたグループが多くの時間を割いて打撃練習をしていたとき、石原(慶幸)が30分余計に打ったというんです。決してこちらから課したわけではなく、石原自身がすごく感じがよくなってきて、何かをつかみそうということで、『もう1球お願いします』と求めてきたんです。それがいつの間にか30分になっていた。何かを掴もうとするときは体もきつくないんです。そうやって技術向上のために自分から求めていく姿勢こそが意識改革ということなんだと思うんです」

—— それを各選手が自覚して、自発的に練習に取り組んでいくことが、監督が仰られるように〝レールに乗る〟ということになるのですね。

 「そうですね。レギュラーになればそれだけのサラリーももらうし、それだけの目でファンからも見られるし、期待される。野球選手というのは期待されて声援を受けるのが一番ですからね。ただ、それが1年間で終わってしまったらレギュラーとは言えませんし、やはり3年間はやらなければいけない。そのレールに乗れば責任感も持ってくれて、手放しにしていても自分で練習をして、キャンプ、自主トレ、オープン戦を通じて、開幕に向けてしっかり合わせてくる。シーズンでも最初は結果が出なかったとしても最後には自分の成績をしっかりと残す。今はレギュラーと呼べる選手が少ないし、そういう選手が一人でも二人でも出てくればがっしりとしたチームになっていく。レギュラー予備軍はたくさんいますからね」

(後編へ続く)