1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。
第2回目の特集は、カープ歴代監督のインタビューセレクション。
広島東洋カープを牽引してきた歴代の監督たち。その手腕や采配の裏には、揺るぎない信念とカープへの深い愛情があった。ここでは、広島アスリートマガジンに過去掲載した監督たちのインタビュー、OBによる証言を厳選。名場面の裏側や選手との関係、勝利への哲学など、時代を超えて語られる言葉の数々をお届けする。
18年間の現役生活では先発、中継ぎ、抑えとして長年カープ投手陣を支え、5年間のコーチ時代は若手投手育成に尽力してきた。第19代広島東洋カープ監督に就任したのは、カープ一筋、23年の野球人生を歩んできた佐々岡真司だ。温和な人柄で知られる佐々岡新監督が目指す野球と理想のチーム像。就任直後に聞いた監督就任までの思い、そして自身の野球観を改めて振り返る。(全2回/第1回)
(『広島アスリートマガジン2019年12月号』掲載記事を再編集)
◆投手も野手も助け合いが大事
─監督に就任されて約1カ月が経過しましたが、やはりコーチ時代と普段の感覚は違うものですか?
「基本は変わらないですけど、これまでのように投手の練習だけを見るのではなく、野手の練習も見なければいけません。チーム全体を見るというところが今までと違うところですよね。最初はどこで見るか迷うこともありながら野手を見て、投手を見て、という感じでした。周囲から『監督』と呼ばれることにまだ違和感がありますし、慣れていないから照れ臭い部分もありますよね(苦笑)」
─球団から監督要請を受けて、就任までに迷いはありましたか?
「最初に球団から要請を受けたときは、まず、すごく光栄に思いましたが『自分で良いのか?』という不安もありました。どちらかと言えば気持ちの半分以上は不安な気持ちが大きかったです。要請を受けてからすぐに即答はできないので、家族と相談したいという気持ちを伝えて少しだけ時間をいただきました。そして1日よく考えて翌日には決断しました。僕としては緒方孝市前監督が来季も指揮すると思っていた中での辞任でした。そこから『次の監督は誰だ?』という中でいろんな噂もありましたし、急な展開でしたので決断するまでに不安はありましたよね」
─佐々岡監督は監督就任までに、コーチを5年間経験されました。指導者としての5年間は、佐々岡監督にとってどんな期間だったと言えますか?
「まずファームで4年間投手コーチを経験させてもらいましたが、その4年間というのはすごく貴重な時間でした。自分自身現役時代も含めて、あまりファームという現場を知らない中でスタートしました。ですが若い選手たちと一緒に汗を流して指導してきたというのは自分としても大きな事でした。そして今季は一軍コーチとして育成から勝負というところに重きを置く場所を経験できました。今季は一軍投手コーチとして一軍の野球を見ながら、ベンチの中から野手の攻撃も見ることができました。そういう意味でもこの1年間というのも非常に大きな経験になりました」
─改めて理想とする監督像を聞かせてください。
「まだ、そこまで具体的な理想像はありませんが、当然初めて監督をやる中でコーチ陣、特に野手面に関しては助けてもらいながら攻撃面を考えてやっていきたいですね。選手、コーチ、裏方さんとすべてが一つになって戦えるチームをつくれる監督でありたいです」
─では、理想とするチームをどう描いておられますか?
「投手は投手、野手は野手、ではなく、投手も野手もお互いに助け合いです。投手が打たれていれば野手が助ける、野手がエラーすれば投手が助ける気持ちを持つ。そういう良い雰囲気のチームにしていきたいですね。3連覇がありましたが、黒田(博樹)、新井(貴浩)が帰ってきて、投手は黒田、野手は新井がしっかりとそれぞれをまとめてくれて強くなったのが今のチームでもあります。引き続きそういうチームでありたいですし、それ以上のまとまりがあるチームをつくっていきたいですね」
─これからチームを再建する上で投打で期待したい選手を聞かせてください。
「すでに今のチームでは投手では大瀬良(大地)、野手では(鈴木)誠也が投打の軸となっています。その他の選手もいる中で彼らにはそういう役目として引き続き期待をしています」
─今季、一軍投手コーチとしてチームを見てこられましたが、現在感じているチームの強み、課題を言うならばどのような部分になってくるでしょうか?
「強みを言えば、若いチームであり、ベンチの中でもみんな明るく、投手と野手の一体感があるチームだということですね。ただ若いだけに脆さがあって弱いところが出る面もある、これが課題とも言えるでしょう。しかし一度自信をつければ一気に力を増すというチームでもあります。今季は投手陣にしても野手陣にしても、そういう脆さが出たシーズンだったのではないかと思います。野手であれば『あと1点が奪えない』という課題が出てきていました。ただ、若いだけに楽しみがあるチームになれると思っています」