1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。
第4回目の特集は、カープ歴代助っ人外国人のインタビューセレクション。
海を渡ってカープにやってきた助っ人たちは、その活躍だけでなく、ユニークなキャラクターでも多くのカープファンに愛された。ここでは懐かしい外国人選手を中心に、彼らの “広島愛”を改めて振り返る。
2008年、カープの勝利の方程式に強力な1枚が加わった。2メートル近い長身を誇るベン・コズロースキーは、威力抜群のストレートと落差の大きいカーブを武器にチームの勝利に貢献している。『For the Team』の心意気で腕を振る、助っ人左腕の言葉をお届けする。(全2回/第1回)
(『広島アスリートマガジン2008年6月号』掲載記事を再編集)
◆文化の異なる場所で野球をする中で、自分を客観的に見直せるようになった
── 2008年1月末に来日してから、取材時点で約4カ月が経とうとしています。日本での生活には慣れましたか?
「まだ短い期間ですが、本当に日本のことが好きになりました。広島もいいところだし、とても気に入っています。チームもチームメイトも素晴らしく、熱いファンが熱心にサポートしてくれているように感じて、そういうところで野球ができるのは、非常にうれしいですね」
── 特に気に入ったことはありますか?
「一番感動しているのは、日本の人はみんな尊敬の念を持って接してくれるということです。自分が野球選手であろうがそうでなかろうが、関係なくみんなが平等に私のことを見てくれています。例えばタクシーの運転手も本当に丁寧に親切に対応してくれますし、お店に行っても店員さんが親切で、尊敬の念が感じられます。そういう意味でも、日本人の皆さんが本当に大好きです」
── 何か覚えた日本語はありますか?
「そうですね。ゆっくり時間をかけながらですが、毎日一言でも勉強しようと思っています。一番気に入った言葉は『すごい』です。みんながそうやって声をかけてくれることもありますからね」
── では野球に関しての話をお伺いします。アメリカのメジャーリーグも経験されていますが、日本の野球との違いを感じることはありますか?
「野球自体はそんなに変わらないと思います。ただ、日本人選手が試合に対してどのように準備をするかというところで違いを感じました。例えば練習に取り組む姿勢や、試合に自分を持っていく準備。選手個人個人の仕事に対する意識が高く、練習量が多いしきっちりとやっているということを日本人選手から感じます」
── その中で学ぶことはありましたか?
「私は日本にひとりで来て、文化が全然違う場所で野球をしています。そういう中で、自分を客観的に見直せるようになりました。例えば、日本人の打者はこういう打ち方、攻め方をしてくるんだなと感じて、自分の投球を振り返ることができます。それまで日本の野球を何も知らなかったからこそ、そういうことができるんだと思います。今までやってきて慣れているところでは同じようなことを繰り返していたかもしれませんが、新しいところに来て、これではダメなんだ、自分を変えなければいけない、と気付かされることはあります。それが一番大きいですね」
── 特に印象に残っているのは、広島市民球場で4月3日にチームが初勝利を挙げたとき、すごい声を上げながらロッカーに引き上げてくるコズロースキー投手の姿でした。その日以外にも勝った試合後に報道陣ともハイタッチをする姿があり、勝利に対する気持ちが本当に強いんだな、と感じることがよくあります。
「勝負をしている中で、勝ちに飢えていた自分の中から自然と気持ちが出たんです。開幕戦では勝ちに等しい試合をしていた中で自分が打たれ、引き分けに持ち込まれてしまった。そこから負けが込んでいて、ようやく勝てたということで喜びも大きかったんです。チームが一丸となって勝てたことも嬉しかったし、そういうことが重なって自然とああいった感情が生まれてきました。勝ちに対する気持ちや飢えはチーム全体が持っていなければいけないことだし、それが自然と出ているのだと思います」
(後編へ続く)