オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナーを務め、メジャー時代は「マック(高島の愛称)はゴッドハンドを持っている」と高い評価を得たトレーナー・高島誠。この連載では、数々のプロ野球選手を指導してきた経験をもとに、これまで公では語られることのなかった、マック流・野球パフォーマンスアップの秘密を披露していく。

◆基盤を作る『短時間・高強度』トレーニング

 野球専門のトレーニングジム「Mac’s Trainer Room」代表の高島誠です。『Mac高島の超野球塾』の連載をご覧いただき、ありがとうございます。

 前回のコラムでは僕がトレーナーとして関わっている武田高(広島県東広島市黒瀬町)・野球部の話をしました。今回のコラムはその続きなので、前回のコラムを読んでない方は、そちらから読んでいただくのをオススメします。

 8月に行われた夏季広島県高等学校野球大会で、春・秋の県大会を含めて、初のベスト4に進出した武田高ですが、野球部の全体練習時間はわずか50分です。今回は、トレーナーの僕が考える『50分練習』のメリット・デメリットをお話しします。

 最初にメリットから。まずは練習の密度が濃いことです。毎日練習時間が50分と決まっているため集中して練習に取り組めます。具体例として分かりやすのは学校の授業です。多くの学校が1授業45分~50分ではないでしょうか。社会人の方もおそらく1時間に1回は小休憩をしているはずです。要は人間の集中力は50分ぐらいが限度だということです。武田高の練習時間は50分しかないので、走り込みや投げ込み、フリーバッティングといった練習を行うことはできません。50分のなかで本当に必要だと思う練習を突き詰めて行なっています。

 続いて『短時間・高強度』のトレーニングを行えることです。これが僕が考える最大のメリットです。前回のコラムで紹介した『ウエイトトレーニング』、『瞬発系トレーニング』、『身体操作トレーニング』は、限界まで追い込むことが大事です。毎日トレーニングをこなせるような軽い負荷では大きな効果は期待できません。実際、選手には、本気で取り組めば、翌日、筋肉痛になるほどのメニューを課しています。

 走り込みや投げ込み、フリーバッティングに時間をかけているチームは、どうしてもトレーニングがおろそかになります。野球の技術練習のあと、疲労した状態でトレーニングをしてしまうので絶対に追い込めません。武田高でトレーニングを行う際は、50分すべてをトレーニングに費やせるので、しっかりと追い込むことが可能です。また、50分で練習が終わるので、追い込んだあとに筋肉を回復させる時間もしっかりあります。

 筋肉を作るボディビルダーは短時間・高強度のトレーニングを行い、体をつくっていきます。野球をする上で基盤となる体づくりも同様で、この『短時間・高強度』のトレーニングがベストな選択と考えています。