いよいよ10月26日に迫った2020年のドラフト会議。苦しい戦いを強いられているカープがドラフトで狙うべき選手とは? アマチュア球界を長年取材する安倍昌彦氏に今ドラフトの注目選手を語ってもらった。

ドラフト候補選手たちの投球を実際にブルペンで受けた上で選手たちの状況を語る“流しのブルペンキャッチャー”としての活動を行う安倍昌彦氏。

 前回まではドラフト1位候補の選手たちを紹介してきましたが、ここからは高い実力を持っている選手の中で“カープにぜひオススメしたい選手”という視点からドラフト候補選手を紹介していきたいと思います。

 まず、カープのドラフトについて春先の報道では今年は大砲候補を狙っていくというスカウト陣の考えが明かされていました。もちろん鈴木誠也選手という球界屈指の実力を持つスラッガーはいるものの、鈴木選手との勝負を避けられると苦しい攻撃とならざるを得ない2019年の状況を見る限り、そうした判断になるのもうなずけます。

 しかし、2020年のシーズンが始まってみると、やはり投手の即戦力候補を獲得した方が現状のチームの課題に合致しているという考えに変化していったようです。3連覇中は盤石な投手陣が揃っていたとはいえ、勤続疲労からか徐々に選手たちの顔ぶれも変わってきていますからね。そういう意味では、やはり今回のカープのドラフトについては投手中心に獲得選手を検討していくはずです。

 今年のドラフトに関して言えば明らかに“投高打低”の傾向が顕著です。そして即戦力として考えられる投手が比較的多いように思います。ただ1位では意中の投手の指名権を獲得できたとしても、2位まで即戦力投手が残っているかというと、他球団の動向もあるためなんとも言えないところです。個人的な考えで言えば、今年のドラフトにおいて、即戦力として計算できる投手は16名程度います。

 今年限りの話ですが前日25日までの順位で2位以降の指名順位が決まってくるため、今年のカープはある程度早い段階で順番が回ってくるはずです。いずれにしろ先ほど名前を挙げた栗林ではありませんが、今のカープにおいてはピンチの場面でもファイティングポーズを取れるような気迫を持った投手が必要なのではないかと考えています。

 それでは具体的にカープにオススメの選手を見ていきたいと思います。まず福岡大大濠高の山下舜平大(やました・しゅんぺいた)投手です。実際に球を受けた印象として、とにかくスケールが大きな投手です。全体的に大柄な投手で目の前に立たれると向こう側が見えなくなるぐらいの大きさ、圧迫感の持ち主です。そしてミットを構えた時点で恐怖を感じるのです。これは大谷翔平投手(エンゼルス)、菅野智之投手(巨人)の球を受けた際にもなかった感覚でした。

福岡大大濠高の山下舜平大(やました・しゅんぺいた)投手

 投げ込まれる球は強くて重い。そして動きます。またカーブに関しても特徴的な球で、大谷投手の横のスライダーを縦変化にしたような、まるで地面に突き刺さるような鋭さを持っているのです。球を投げている様子を見る限り、まだまだ余力もあり、そして伸び代も感じさせます。プロで鍛え上げていけば160キロを狙える力を持った投手ですし、今後の成長を含めて非常に興味深い投手です。

 即戦力候補という意味では明治大の入江大生投手も良い投手です。

明治大の入江大生投手

作新学院高時代は今井達也(西武)と共にチームの中心選手として活躍していたのですが、当時は野手として4番を打っていました。しかし、明治大に入り志願して投手に転向したのです。高い身長から繰り出される直球とフォークのコンビネーションで打者から三振を奪うタイプの投手で、イメージとしては現在カープの二軍投手コーチを務める永川勝浩氏をイメージすると良いかもしれません。

 また亜細亜大にいる平内龍太(へいない・りゅうた)という投手も面白い存在です。昨季までは故障がちであまり実力を発揮できていなかったのですが、今年から急激に頭角を現し始めました。この投手も最速156キロをマークしたということもあり、直球とフォークで三振を奪う、永川氏のような投手だと見ています。個人的には早川投手あるいは栗林投手を指名した上で、ドラフト2位で入江投手あるいは平内投手が獲得できたとなればカープにとっては万々歳のドラフトとなるように思います。