◆変化球の見極めに大切なのは視力ではなく予測

 一軍クラスの投手の変化球を攻略するために必要なことは、ボールの回転を見極められるかどうかです。もっと言えば、ピッチトンネルを通過するボールを見極められるかどうかにかかっています(ピッチトンネルについてはこちらのコラムをご覧ください)。

 見極めにおいて大切なのは『視力』ではなく『予測』です。球の軌道のイメージを描くことができれば変化も見えてくるのですが、正隨選手はまだその予測がうまくできていないように感じています。

 正隨選手も参加した昨年12月、今年1月の自主トレには山岡泰輔投手(オリックス)も来ていましたが、山岡選手の持ち味である縦のスライダーには、まったくと言っていいほど反応できていませんでした。

 ちなみに、変化球の見極めに関しては、バッティングマシーンのボールを打つことではなかなか上達しません。レベルの高い一軍クラスの投手のボールをどれだけ体感できるかが一番のポイント。なので、何よりも大切なのは『実戦』と言えるでしょう。

 余談ですが、前回紹介した羽月選手は、この変化球の見極めがうまい選手です。センスがありますし、自主トレでは、山岡投手など一軍で活躍する投手の球にしっかりと反応していました。二軍で3割を超す打率を残し一軍で活躍していますが、自主トレで一線級の投手と練習できたことも、今年飛躍した土台の一つになっているのかもしれません。

 正隨選手の今年の二軍での打率は10月29日時点で.276。彼が持っている能力から考えると物足りませんし、変化球の見極めを含めた対応が上達すれば、もっと率を残せるはずです。まずは二軍で3割を超すアベレージを残すことを念頭に置いてほしいですね。

 今年、一軍の試合に出場し、ホームランを打てたことは正隨選手にとって非常に大きな経験になったと思います。ただ、今の成績では一軍定着はほど遠いように感じます。このコラムがアップされる時にはすでに今季のウエスタンリーグは終了していますが、11月8日からはフェニックスリーグが始まります。ここに参加するならば、打率3割をキープすることを意識して試合に臨んでもらいたいですね。

 そして将来的には、一軍で「3割·20本」を狙ってほしいと思っています。先ほども言いましたが、ホームランを意識すると打率が下がってしまいそうなタイプの選手なので、長打はあまり意識せず打席に立ってほしいところです。そもそも彼のパワーはすごいので、しっかり球をとらえたら自然と打球は飛んでいきます。

 カープの一軍外野手をみわたすと、左の巧打者は多いですが右の長距離バッターはいません。そういう意味では、正隨選手にも大いにチャンスはあるはずです。そして、足も早く肩も強い選手なので、ポジション的にはライトが向いています。現在のカープでは、ライトのポジションには日本の4番·鈴木誠也選手がいます。いつか、鈴木選手とレギュラーを争えるような選手に育っていってほしいですし、そのためには、まずは秋のフェニックスリーグ、そして来年の春のキャンプでしっかりと結果を出してほしいですね。

 正隨選手には、まだまだ伸びしろはあるだけに期待しています。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。