オリックス·ブルーウェーブ(現オリックス·バファローズ)、MLBワシントン·ナショナルズのトレーナーを務め、メジャー時代は「マック(高島の愛称)はゴッドハンドを持っている」と高い評価を得たトレーナー·高島誠。この連載では、数々のプロ野球選手を指導してきた経験をもとに、これまで公では語られることのなかった、マック流·野球パフォーマンスアップの秘密を披露していく。

 

◆正隨選手が中学3年時に叩き出した衝撃の数字

 野球専門のトレーニングジム「Mac’s Trainer Room」代表の高島誠です。『Mac高島の超野球塾』の連載をご覧いただき、ありがとうございます。

 前回のコラムでは、高卒2年目の羽月隆太郎選手を取り上げました。今回のコラムでは、羽月隆太郎選手と一緒に僕が主催する自主トレに来てくれている正隨優弥選手を取り上げたいと思います。 

 

 正隨選手は大卒2年目の外野手。ドラフト6位でカープに指名され、入団しました。今年9月に初めて一軍に昇格し、9月18日のヤクルト戦でプロ初ホームランを放ちました。

 実は正隨選手とは、彼が中学2年生の頃からの付き合いになります。当時の正隨選手が所属していた野球部の監督がうちのジムに連れて来られたのがきっかけで、高校、大学、そしてプロと、彼の活躍を見守っています。

 正隨選手の魅力を一言で表すと「パワー」になります。タイプとしてはズバリ力強い打撃が魅力の長距離バッターです。正隨選手の圧倒的なパワーを示す、こんなエピソードがあります。

 彼が中学3年のとき。スイングスピードで「153km/h」のスコアを叩き出しました。数字だけ書くとイメージしづらいかもしれませんが、この「153km/h」という数字はプロ野球選手とほぼほぼ同じ数字です。10年近く経ちますが、正隨選手がこの数字を叩き出したときの衝撃はいまだに忘れたことがありません。

 正隨選手は中学で投手をやっていたのですが、捕手が捕球できないほど、スピードもキレもあるボールを投げていました。スピードガンで測ったわけではありませんが、間違いなく140km/hは出ていたはずです。瞬発力も含めて、とにかくフィジカルがめっぽう強い、中学校の頃からプロ野球選手としてやっていけそうな楽しみを感じさせる、将来有望な選手でした。

 そんなパワーが魅力の選手ですが、『プロの世界ではあまりホームランを意識するな』とアドバイスを送っています。それは正隨選手が長打を意識するあまり、自分の打撃を崩してしまいがちだからです。正隨選手が苦手にしているのは、一軍クラスの投手の「変化球」。真っ直ぐにはめっぽう強いのですが、鋭く変化するボールへの対応は、まだまだと言えるでしょう。