11,000人を越えるサポーターの前で、8年ぶりとなるルヴァンカップ決勝進出を決めたサンフレッチェ広島。『4つ目の星』奪取に向け躍進を続ける紫軍団は、8月中の公式戦は無敗、一時はリーグ首位に立つ快進撃を見せてサッカーファンの関心を集めた。

 ここでは、サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏に、2022年8月上旬からのサンフレッチェを振り返りながら、注目選手やプレーなどを熱く語ってもらった。

 吉田氏が語る、『サポーターの声援』が持つ力とは……。
(データは全て9月6日の取材時点)

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J初ゴールをあげたピエロス・ソティリウ。UEFAネーションズリーグでは、母国・キプロスの代表選手に選出されている。

◆貪欲に追加点を狙う、攻めの姿勢

8月27日に行われた、C大阪戦(○0ー3)は、今シーズンの試合の中でも、トップクラスにハイレベルな一戦となりました。

 中でも印象的だったのは、ピエロス・ソティリウのJ初ゴールです。

 あのゴールが生まれたのは、アディショナルタイムも終盤のタイミングでした。0ー2で勝っている展開、最終盤でのCK。本来であれば、短いパスを回して時間稼ぎをして、アディショナルタイムが過ぎるのを待っていてもおかしくない場面です。実際にピエロスは一度、パスを受けるためにキッカーの満田のもとに近寄っていきました。

 ただ、そこで一瞬、ベンチに視線を移します。おそらくは、「ゴール前に行け、シュートを決めろ」という指示があったのでしょう。その結果、こぼれ球を拾った満田のパスから、ピエロスの見事な来日初ゴールが決まりました。

 このプレーには、シュートを外すかもしれない、カウンターをくらうかもしれないというリスクも考えられました。そんな中で、満田がしっかりとCKを入れたこと、ピエロスがしっかりシュートを打ったこと。そして何より、「3点目を取りに行く」という決断をしたことが素晴らしいと思います。

 柏 好文も、攻守に素晴らしい活躍を見せてくれています。得点にも絡んでいますし、守備ではG大阪戦のスーパーセーブがありました。失点すれば同点に追いつかれるという場面で、柏がゴールにカバーリングに入り見事に相手のシュートを防ぎました。あの場面であのポジションに柏がいなければ、試合はどうなっていたかわかりません。裏へ抜け出す動き、周りを使う動きにも、ベテランらしさを感じます。

 9月3日(○2ー0)の清水戦では、2年半ぶりに『声出し応援』が解禁となりました。この試合で特に注目したいのは、川村拓夢が決めた1点目のゴールです。

 このゴールにいたる一連の流れには、川村の3つのスーパーなプレーが絡んでいます。

 まずは自陣内で、長身を生かしたヘディングで相手に競り勝ったプレー。次に、中盤で混戦する中、しっかりと相手からボールを奪い返したプレー。そして、空いているスペースに走り込みシュートを決めたフィニッシュのプレー。特に最後のシュートは、角度もなく、相手が寄せてくる中でもバランスを崩すことなく決め切っていましたね。2点目のロングシュートも、どちらも積み重ねたトレーニングが成果につながった素晴らしいゴールでした。