カープを支える主力選手のルーキー時代を振り返る本企画。今回取り上げるのは、2020年シーズンにセンターのレギュラーに成長した西川龍馬。現在は外野手一本で活躍を続けるが、社会人時代はショートとしてプレーし、カープ1年目はサードとして出場を重ねた。慣れない守備位置で格闘を続けていた西川の一年目の思いを、当時の独占インタビューをもとに振り返る。
◆ショートへのこだわりを封印して臨んだルーキーイヤー
プロ入り前までショート一筋で過ごしてきた西川龍馬。しかし、カープの一員となった2016年は、ショートに田中広輔という不動のレギュラーがいたため、サードのポジションでの出場が続いていた。
「今までしっかりサードを守ったことがなかったのでその点は難しいです。カープに入団して初めてサードの難しさを感じました。正直今でも慣れたという感覚はありません」
ショートと比べて打球の勢いの強さ、バウンドに対しての体の合わせ方、スローイングも足が止まった状態で行うなど、ショートを守っていた頃とは異なる動きに戸惑いを感じることが多かったという。
「ショートであれば動きのなかの流れで送球できるのですが、サードとショートでは角度も距離感も異なるので、その点も対応していかないといけません」
内野の定位置争いが激しさを増すなか、走攻守の総合力が評価され、開幕一軍入りを果たした西川。しかし4月11日に一軍登録を抹消され、二軍でサード守備の鍛錬に励むこととなった。
「二軍でサードの守備に慣れてこいということで、一度二軍降格となりましたが、当時は自分自身守備に自信がなかったので、良い機会だと思って前向きな気持ちで捉えることができました。二軍ではサードから強い球を投げる際のポジショニングの確認などに意識して取り組みました」
約1カ月、一軍に復帰した西川は、代打やサードでの守備固めを中心に出場。1年目から自らのプレーで存在感を高めていった。
「僕のアピールポイントは打撃です。僕にはそれしかないので、とにかく思い切りの良さを見せていきたいです。課題はやっぱり守備ですね。これについてはとにかく練習して、サードというポジションに慣れたいと思います」
自らアピールポイントと語っていた打撃では、開幕2戦目のDeNA戦(マツダスタジアム)で、プロ初安打となる三塁打を放つなど、シェアなバッティングで躍動。62試合に出場し、打率.294をマークした。
かつてショートのレギュラー・田中広輔も背負った「63」を背負った若武者は、慣れないサード守備との戦いを経験し、一軍に自らの居場所をつくりあげていった。