フランスアの故障離脱(右膝手術)により、今季のカープの新守護神と目されているのがドラフト1位右腕の栗林良吏だ。入団と同時に受け継いだ背番号『20』は、かつて絶対的な守護神としてカープを支えた永川勝浩が背負っていたもの。はたして球団歴代1位のセーブ数を誇るかつてのクローザーの思いも胸に、即戦力右腕が最終回のマウンドに上がることになるのだろうか。ここではプロ4年目で守護神としての地位を固めつつあった、2006年当時の永川勝浩の懐かしい声をお届けする。

足を大きく上げる独特の投球フォームが懐かしい永川勝浩現一軍投手コーチ。

◆故障したベイルのあとを受けて守護神に

―故障したベイルのあとを受けて守護神としてのマウンドを任されている訳ですが、昨シーズンとは大きく違う数字が二つあります。一つは四球が減ったこと、二つ目は防御率が格段に良くなったことです。この点についてはいかがでしょうか。

「大きく変えた点はありません。ただ二段モーションが禁止になって僕の中でフォームを変えた部分はありますね。それで少しスムーズになったというのが一番だと思います。二段モーションの時と比べて今は力が抜けているんです。だからフォーム的に見て全体のバランスが良い感じです」

―二段モーションの時とはずいぶん違う?

「以前は一回、左足を上げる時に力を入れて、そこからまたゼロにして、勢いでいく感じだったんです。今は1から10に行くまでホントにちょっとずつ(左足が)上がっていって最後に『10』(一番、高い位置)まで上げる感じになっています。そうすることでフォームが安定してきているとは思います。それが最低限のピッチングはできるようになってきた理由だと思います」

―フォームが安定してきたことを一番、実感できるのはどういう時ですか。

「やっぱり真っ直ぐの勢いが違うんです。昨年と同じ球速でも手応えを感じることができています。ただ単に思い切り投げている、というよりはうまくボールに回転をかけることができている感覚です。下半身もすごく大事なんですが下半身と上半身のバランスがうまくとれて連動しないといけません。それがすごく良いのが先ほど言われた数字にも出ていると思いますし、抜けるボールが少ないから四球も少ないのでしょう」

―それは『新しい発見』のようなものなのでしょうか。

「そうですね。力を思い切り入れなくてもそこそこのボールが投げられるというのは初めての経験ですね。僕は多分、そういうボールは投げられないものだと思っていましたから。これまでは腕を上げていく時点でもう力が入っていたんですが今は本当に力を抜くようにして最後に全神経を集中できるよう心掛けています」