引き分けを挟んでの6連敗と、3年ぶりの覇権奪還を目指すカープにとって厳しい戦いが続いている。だが、過去には怒とうの追い上げで、意地と実力を見せつけたシーズンも存在する。ここでは数回にわたり、カープが底力を見せたシーズンを振り返る。

超強力打線の4番を務めた江藤智。勝負強い打撃でチームを牽引した。

◆スローガンはトータルベースボール

 19年ぶりの最下位の責任を取って、1993年オフに山本浩二監督が辞任を表明。1994年は、前年まで二軍監督として指揮を執っていた三村敏之が一軍監督を務めることとなった。

 三村新監督は“トータルベースボール”をスローガンに、最下位に沈んだチームの立て直しを図った。ただ前半戦は投手王国の象徴だった北別府学や川口和久らの状態が安定せず、江藤智の一時離脱などもあり下位に低迷。開幕から3カ月連続で負け越すなど、波に乗れずにいた。

 ところが8月に入ると、復帰した江藤が当時の歴代タイ記録となる月間16本塁打を放つなど爆発。8月下旬から怒とうの10連勝を飾り、首位・巨人の大型連敗もあって一気に優勝争いに加わった。

 9月に入ると巨人、中日との三つ巴の争いに突入。9月下旬には首位・巨人に肉薄し、結果的には4ゲームほど引き離されての3位に終わってしまったが、最下位からAクラスへと躍進するなど、三村カープが掲げた全員野球を印象づけるシーズンとなった。