2020年シーズン開幕を目前に、チーム内では激しいポジション争いが繰り広げられている。そんな中、アピールを続けている堂林翔太と髙橋大樹。必死に一軍枠を争う、2人の右打者の今に迫った。

 

 野球選手にとって実にシビアな季節である。キャンプから走り続けた疲労もあるはずだ。それでいながら、3月、結果を出し続けなければ開幕一軍の切符を手にすることはできない。ただ、この競争や危機感が選手の闘争本能に火をつける。

 「1球でとらえることが大事。いつ二軍落ちになってもおかしくありませんから」

 プロ8年目を迎える髙橋大樹はこの状況を、焦りでなく集中力に転化させている。そもそもは高校通算43本塁打のスラッガーだ。なんといっても持ち味は、積極的にバットを振っていく姿勢だった。入団2年目の2014年、プロ初スタメン時のコメントが印象深い。

 「(4打数0安打と)結果は出ませんでしたが、振っていくという自分のやれることはできました」

 当時20歳の清々しさと、20歳に思えない揺らがぬ姿勢に夢を抱いたものだった。ただ、その後一軍定着はかなわず、15〜17年は二軍生活が中心になった。バットを積極的に振っていけない打席も見られるようになった。朝山東洋一軍打撃コーチは当時をこう振り返る。

 「若いときから、振っていけることが髙橋の強みでした。けれど、振っていけない時期もあって、内田順三(当時二軍監督)さんたちと、『ストライクは振らなきゃ!』と何度も言ったのを覚えています」