時間は要したかもしれないが、髙橋は自分の強みを取り戻した。精神面もあるが、フォームを含めた技術的な改良も奏功した。昨シーズン、東出輝裕二軍打撃コーチは付きっきりでフォーム改良をアシストした。

 「グリップが最初から高いと、あとは下がるばかりなので難しいところもあります。ならば、最初は少しグリップを下げておいて動きの中で弓矢を引いた状態をつくろうということでした。彼には厳しいことも言いましたが、自分で気づけたのはプラスだと思います」

 無駄な力みを廃し、集中をキープした状態から、一振りで仕留める。しかも、そのスタイルは格段にレベルアップしていた。2月23日の練習試合、第2打席で髙橋は四球を選び、この内容が首脳陣にも高く評価された。

 「最初から選びにいくのではなく、全てを振りにいった中でのものなので評価しています」(朝山コーチ)

 この打席、髙橋は全ての球を打ちにいき、踏み込む中でボールを見極めた。「思った以上に体が止まった」のは、彼の試行錯誤の産物に他ならなかった。オープン戦でも本塁打を放つなど結果も出ているが、二軍コーチになった東出の言葉が全てをあらわしている。

 「テレビ画面で見ていますが、何かしそうな雰囲気があります」

 激戦区のレフト、右の代打、将来の大砲候補。さまざまな枕詞はあるが背番号50は今、この場面の1球に意識を研ぎ澄ましている。