意識を変えたパ・リーグ打者のフルスイング

 チーム状況が上向かない中で、鈴木自身が復調傾向を見せたのはチームが鬼門とする交流戦からだ。徐々に出場機会も増え、パ・リーグのエース格を相手に8試合連続安打もマーク。そして“現在の鈴木誠也”をつくりあげる意識改革が見られ始めたのも、この時期のことだった。

「パ・リーグの打者を見ていると、思い切り振ってくるし、恐いなと感じました。それを見て『こういう打者になりたい』と思ったんです。そこから自分の中で感覚も良くなっていったように思います。パ・リーグの打者を生で見ることができたのは僕にとって大きかったですね。長く一軍にいて、それなりに打てるときもある中で、『何か違うな』とか『単打ばかりはいらないな』という感覚があったんです。塁に出ることも大事ですが、僕は長打も求められているし、物足りないと思っていた部分はありました。そんなときにパ・リーグと試合をしていろんな選手を見て、こういう方が良いんだなと思うようになりました」

 6月23日にはプロ初の3番スタメンも経験。いつしか鈴木は一軍の舞台で、1番打者ではなく主軸に組み込まれる機会も増えていった。ベンチの中から見るパ・リーグの打者のスイング、試合の中でしかできない経験。一軍に居続けることで、日々さまざまな刺激を自らの力に変えていった。そしてこのシーズンは黒田、新井の存在も鈴木の気持ちを奮い立たせていた。

「一緒にプレーさせてもらっているというのは、僕の中ですごく大きいですね。新井さんも故障がありながらですし、黒田さんも万全の体調ではない中で、納得いく結果ではないと思います。それでも何とか抑えてやろうとか、何とか塁に出てやろうというものを感じるんです。そういう姿を見て、僕自身結果を求めていたんだなと思いました。そう思うようになってから、気持ち的にもっと開き直れるようになりましたね」

 長年カープを支えてきた2人のベテランの背中から感じるものは多く、同じ野手である新井からは直接アドバイスを受けることもあった。この時期、鈴木は一人のプロ野球選手として幅が広がっていたに違いない。