今、カープの一軍正捕手争いが、熱い――。8月29日にケガから一軍復帰を果たした會澤翼が、復帰即スタメンマスクで存在感を示せば、9月7日には「5番・一塁」で先発出場し逆転3ランを放った坂倉将吾が規定打席に到達してセ・リーグ首位打者に躍り出た。

 果たして、「一軍の正捕手」を掴むのは、會澤か?坂倉か?両者の“強み”を見ながら、その動向を予想してみたい。
※成績はすべて9月10日時点。

ケガから復帰以降、巧みなリードで投手陣を牽引する會澤翼選手。

◆熾烈を極めるカープの捕手争い。あらためて考える會澤と坂倉の魅力

■坂倉将吾の“強み”
・リーグ首位打者を走る打撃センス
・OPSリーグ6位を誇る総合力
・23歳とノビしろ十分

 前述の通り、現在セ・リーグ首位打者を走る坂倉将吾。その最大の魅力は、やはり“打力”だろう。高卒1年目からファームで打率.298(ウエスタン2位)を記録するなど、早くからその打撃センスは高く評価されていたが、ここにきて完全に開花した感がある。

 特に進化が顕著なのはその「パワー」だ。昨季まではいわゆる「アベレージタイプ」の印象が強かったが、今季はキャリア初の2ケタ本塁打を記録。OPS(出塁率+長打率)はオースティン、鈴木誠也、村上宗隆、岡本和真、山田哲人といったリーグを代表するスラッガーたちに次ぐリーグ6位だ。

 また、左打者ながら今季は左投手をまったく苦にせず、対左投手打率.345(87打数30安打)をマーク。打者としては限りなく「穴の無い」成績を残している。

 このまま首位打者を獲得すれば、2019年の森友哉以来、NPB捕手史上5人目。カープの捕手としては史上初の快挙。加えて、今季で高卒5年目の23歳と、攻守ともにまだまだ伸び盛りなのも大きい。キャリアを積むごとに進化する打撃に、守備面の安定感が加わったとすれば鬼に金棒。リーグを代表する捕手へ成長する可能性も十分ある。

■會澤翼の強み
・投手陣からの圧倒的な信頼感
・三度の優勝を知る経験
・衰えぬパンチ力

 ケガから一軍復帰を果たした8月29日。いきなりスタメンマスクをかぶった會澤は4人の投手を巧みなリードで導き、完封リレーを手繰り寄せた。チームは3連勝中で、會澤本人は故障明け……それでもいきなりマスクをかぶるのは、投手陣からの信頼が厚いからこそだ。

 その“信頼”は、2016年からのリーグ3連覇に貢献し、長年マツダスタジアムのホームベースを守り続けてきたからこそ。一朝一夕で掴めるものではない。この“経験”は、プロ5年目の坂倉が逆立ちしても手に入れることのできない、會澤の大きなアドバンテージになっている。

 打撃面では坂倉に見劣り部分はあるが、持ち前のパンチ力はまだまだ健在。前述した一軍復帰戦でも第1打席でいきなり右中間へ二塁打を放ち、2018年には規定打席不足ながら打率.305を記録。同年からは2年連続で2ケタ本塁打を放っている。そもそも一軍定着当初、石原慶幸と正捕手を争っていた會澤は、どちらかと言えば「守」より「打」の捕手だった。