9月17日現在、カープは43勝57敗10分でリーグ最下位に沈む。チーム打率は両リーグトップの.260を記録するも、得点はリーグ5位の414。また、ここまでの盗塁数はリーグ5位の51個と、お家芸である“機動力野球”は鳴りを潜めている状況である。

 カープが球団史上初の3連覇を果たした2016〜2018年。不動のトップバッターとして、機動力野球を体現していたのが現在チームの選手会長を務める田中広輔だった。3連覇中の田中は以下のように高い出塁率を誇っていた。

・2016年 出塁率.367(盗塁28、四球77)
・2017年 出塁率.398(盗塁35、四球89)
・2018年 出塁率.367(盗塁32、四球75)

 2017年に残した出塁率はリーグトップの数字であり、盗塁王にも輝いている。3連覇当時は田中、菊池涼介、丸佳浩(現巨人)のタナキクマルトリオで上位打線を形成し、数多くの得点機会を生み出し、毎年リーグトップクラスの得点力を誇っていた。機動力野球を推進する上で重要な役割となる1番を担い続けていた田中は、どのような思考でプレーしていたのか?

 ここではカープ機動力野球を改めて考えるべく、2連覇を果たした2017年シーズン中に聞いた田中のインタビュー(広島アスリートマガジン2017年9月号掲載)を振り返っていく。

3連覇中、不動の1番打者を務めた田中広輔。2017年には最高出塁率のタイトルを獲得した。写真は2017年

◆1番として、打撃だけではなく走塁面でもチームに勢いを

ー今季も開幕から全試合で1番打者として出場を続けています。ここまでご自身の打撃内容をどのように感じていますか。

「昨年1年間1番で出させてもらったことが今季はすごく生きているなと感じます。1打席ごとに集中するというか、意図を持った打席が続いていますし、点差が開いていてもしっかり自分の意識している打席を展開できていると思います」

ー昨季と今季で1番打者として、意識が変化した部分などはありますか?

「つなぎの意識という面では昨季から変わることはありませんね。また昨季から1番から3番が固定されているので、お互いの役割に対する意識とか実行する確率が上がってきていると感じますね。それだけに個々のやるプレーがより熟成されてきているとも言えると思います」

ー打席では粘って投手に球数を投げさせている印象があります。これは意識をされているのでしょうか?

「追い込まれてからは簡単に三振しないということが、チームのテーマとしてあります。特に意識して粘ろうというのは、本当に追い込まれてからですね。それ以降のカウントでは甘い球を積極的に打っていこうという意識で臨んでいます」

ー第一打席での意識はどんなものなのですか?

「やはりチームに勢いをつけたいという思いがありますし、1番打者として粘ることで後ろを打つ選手に球数を多く見せるとか、僕が凡打でも良い内容と悪い内容では「今日はいけるんじゃないか」と思うみんなの印象が変わってきます。そういった中で良い集中力を持って第一打席に臨めていると思います」

ー1番打者として次の塁を狙う意識を聞かせてください。

「チームとしてそういう意識でやっているので、僕以外の選手も次の塁を狙う意識は高いと思います。それだけにチーム全体として良い方向にいっていると思います。僕は1番打者を任されているので、打撃だけではなく、走塁面に関してもチームを勢いづけたいという意識で走っています」