カープOBの笘篠賢治がカープ野手陣を徹底分析するコラム。今回は、カープ打線を牽引する鈴木誠也、坂倉将吾の打撃について取り上げる。※取材日は9月中旬。

3年ぶりに30本塁打を記録した鈴木誠也選手。

◆得点力アップのカギを握る、鈴木誠&坂倉の『SSコンビ』

 東京五輪では、日本代表の4番として金メダル獲得に貢献した鈴木誠也ですが、ペナントレース再開後も好調を維持しています。鈴木の爆発力が、チーム本来の姿をもたらしているように思いますし『良い意味で吹っ切れた』という感じがします。

 一球を仕留めようとする繊細な打撃だと、来た球を見送ることが多くなります。ファールしてしまうと『ミスショットしてしまった』と思うこともあったかもしれません。それより『空振り、ファールOK』と多少のアバウトさをもって積極的にスイングしていく方が、相手からすれば振られる怖さがあります。

 そこに加えて、鈴木の後ろを打つ5番・坂倉将吾の好調さです。9月8日に規定打席に到達し、首位打者争いを演じるなど素晴らしい活躍。特に見送り方が良くなりました。構えからスイングまでの一連の流れのなかで、ベース板の幅と、膝から脇の下といわれるストライクゾーンに来る球に対し、どのコース、どの球種に対しても、目と打つポイントの距離が変わらず、近寄りすぎたり離れ過ぎたりしていません。坂倉の頭の位置を見ていれば分かりやすいのですが、ピタっと止まって動いていないのです。

 9月中旬時点では首位打者も狙える位置にいます。ただ、そうなると新聞に名前が出たり、他の選手が気になって数字を見るなど意識してしまうものです。そこを意識せずに平常心で臨めば、首位打者にも近づくと思います。

 課題だった5番打者も坂倉がチーム最多出場となり定着しています。『鈴木だけをマークすればいい』という状況ではなく、次の坂倉もマークしなければならない打線となったわけです。そう考えると今季の4、5番は鈴木、坂倉の『SSコンビ』で固定していきたいですね。この二人の好調が、チームの状態に直結していくでしょう。