これまでのコラムでは、スポーツに多く存在する「成長につながる機会」についてチャレンジと過程、さらにその体験を学びにつなげる経験学習のサイクルについて説明させていただきました。

 

ここからは、スポーツの、もう一つの特徴について触れていきます。
もう一つの特徴とは「チーム」です。
サッカーやバスケット、バレーといった、いわゆるチームスポーツは当然ですが、個人競技においても「部」といった形でチームが存在し、選手とコーチの関係もチームです。
このチームでの体験も成長につながる機会です。

【対人能力を伸ばすことができる体験の機会】

チームでの体験によって、対人能力を伸ばすことができます。
スポーツはチームメンバーと互いに関わり合いながら、協力し目標の達成に向かっていくことが求められます。
チームメンバーと関わることを通して、自分の考えを伝える、メンバーの考えを聞く、といったコミュニケーション能力を伸ばすことができます。
また、互いに知恵や力を出し合い、補完し合いながら、目標の達成に向けて課題を発見し解決し、切り拓いていくことを通して協働力を学ぶことができます。
コミュニケーション能力や協働力だけにとどまらず、メンバー同士で励まし合い、働きかけ、巻き込みあいながら前に進んで行くこと、役割や立場によってはリーダーシップやフォロワーシップなど、対人能力を伸ばす機会となります。

以前のコラムでお伝えしたように、現代は変化が著しく、将来の予測が難しい時代です。
こうした時代において、社会活動を行っていくにあたり1人の力で解決したり対応することは難しく、他者と関わることは欠かせないことです。
チームという体験を通して、対人能力を伸ばし、身につけておくことは、これからの社会を生きていく上でとても重要、いや、欠かせないことなのです。
こうした能力を学び、伸ばすこともスポーツは可能にします。

【『違い』を学び、『違い』から学ぶことができる】

チームの特性はそれだけではありません。
もう一つの特性を最大限に生かすと、これまでのコラムで触れてきた体験での学びを何倍にもすることができます。

それは「『違い』を学び、『違い』から学ぶことができる」という特性です。
チームで行った練習、臨んだ試合は、チームにとって共通体験です。
例え同じ結果、同じ過程であったとしても、その受け取り方や捉え方はチームメンバー一人ひとりで異なります。
例え同じ感情を抱き、同じ考えだったとしても、その感情や思考が生まれるまでの過程が全く同じということはありません。

以前説明した経験学習のサイクルに当てはめてみます。

 

「観察と省察」では、それぞれの立場から見えた経緯が明らかになることで、一人では把握しきれなかった事実を知り、気づくことができます。
「一般化・概念化」においては、それぞれの立場はもちろん、これまでの一人ひとりの異なる経験値によって、多角的な分析が行われます。これによって、チームやメンバーそれぞれの課題はもちろんのこと、強みなどについて新たな発見を得ることができます。
「適用・応用」は、自分だけでは思いつかなかったようなひらめきを得られるだけではなく、メンバーのアイデアにさらに工夫を重ねることで、より洗練された解決案や応用案を見いだすこともできます。
さらに、このサイクルによって自らが導き出した持論について、メンバーから異なる視点でフィードバックを受けることによって、具体性を高めることができます。
つまり「違い」が個人の学びを何倍、何十倍にもしてくれます。

ただ、全てのチームがこのような成長につながる学びを得られるか?というと、残念ながらそうではありません。
対人能力を伸ばし、違いから学びを得らえるチームとは?そうした「チーム」になるには?という点について、次回以降でお伝えしていきたいと思います。

 

【プロフィール】
門田卓史(もんでん たかし)
(株)edu-activators(エデュアクティベーターズ) 代表取締役
1975年広島生まれ、2016年より現職。アドベンチャー教育、体験教育を背景に、企業や大学、学校教育、スポーツなど幅広い分野に対し、チームビルディングや組織開発、人材育成、ファシリテーション研修などを提供。理論や経験に基づく知識を提供するだけでなく、体験・体感型のワークを通し、受講者自身の気づきから学びを促す納得度の高い参加型の研修を展開。スポーツ分野においては、日本サッカー協会A級ライセンス講習会、日本バスケットボール協会S級ライセンス講習会において講師を務めるほか、サンフレッチェ広島スクールが『人としての成長』を目的に開催されるキャンプの企画運営を担うなど、成長をテーマとした研修を提供している。

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