前回のコラムでチームでの体験も「成長につながる機会」であるとお伝えしました。
対人能力を伸ばし、違いから学ぶことができるチームとは、ということについて今回から考えていきたいと思います。

 

【よくあるチームに対する考え方にはリスクが潜んでいる】

研修の場などで私が「チームと言えばどんなことをイメージしますか?」と質問すると、「団結力がある」「一体感がある」「仲が良い」「和」といった意見が多く出てきます。
こうした状態はチームの一員として「チームらしい」と思えるものですし、外から見ても「チームらしい」と感じることができると思います。
また、実際にチームで取り組む際に指導者が「チームなんだからまとまろう」「チームなんだから我慢しろ」といった声をかけているシーンをよく目にします。

確かに雰囲気がいいことや一体感は重要なことではありますが、これらのイメージはチームとして何かに取組んだ結果、つまり状態ではないでしょうか?

仲良くすることや和ということを目指した場合を例に考えてみます。
チームの方向性について「あれ?これでいいのか?」と気になっていることがあったとします。しかし、多くのメンバーがその方向性に納得している様子が見られ、意見がまとまりつつあった場合、この状況で気になっていることを指摘すると、雰囲気が悪くなってしまうかも、聞いてもらえないかも、と空気を読んで躊躇してしまう可能性があります。
また、メンバーのプレーや取り組み姿勢について「ここが良くないな。こうすればいいのに」と気づいたことがあったとしても、そのことを伝えることで関係が悪くなるかもしれない、と考えてしまい伝えないままとなってしまう可能性があります。
いわゆる「波風を立てない」ことが意識されてしまうリスクがあります。

波風を立てないことを優先してしまうと、異を唱えることが難しい同調圧力(同調圧力・・・集団において、少数意見を持つ人に対して、周囲の多くの人と同じように考え行動するよう、暗黙のうちに強制すること)を生んでしまい、気づいたことを指摘することや考えを率直に伝えることを躊躇し、場合によっては指摘をしないままになってしまう可能性が生まれてしまいます。
さらにチームが「決定すること」や「意見を一致させること」に意識が向き、リスクや方向性について適切な判断や評価ができず、安易な決定をしてしまう集団浅慮に陥ってしまう可能性が高くなります。
また、メンバー一人ひとり異なることによって生まれる気づきや学びを指摘し合うことや、共有することが難しくなってしまい、相互に高め合うことも難しくなってしまいます。

【チームに対する考え方を変える必要がある】

もちろんそういった状況に陥ってしまったことについて、チームでふりかえり「それではダメだ」「こうして行こう!」と気づくことができれば学びの機会とすることはできますが、チームでの体験によって得られる「成長につながる機会」を考えると、同調圧力などによって失ってしまう機会が多くあるのはとても勿体ないことです。

これまでのコラムでお伝えしてきたように、スポーツも現代社会も日々刻刻と変化し続けています。
変化し続けていく環境下において、チームに対する考え方を変える、アップデートする必要があります。
メンバーは一人ひとり異なることの強みを生かし、自身が気づいたことや考え、思いについて率直にかつ躊躇なくチームやメンバーに対して伝えることができるだけではなく、チームはその考えや意見を拒絶することや即座に否定することなく受け入れられ、対立対峙をしながら関わり合っていくことが重要です。

その為にも、チームはまとまっていることや一致団結していることが大切、というチームに対する考え方ではなく、「目的や目標を共有し、その達成に向けて、メンバーが相互に有機的かつ積極的に関わり合い、補完し合い、協働し合える集団」という考え方に変えていく必要があります。

 

【プロフィール】
門田卓史(もんでん たかし)
(株)edu-activators(エデュアクティベーターズ) 代表取締役
1975年広島生まれ、2016年より現職。アドベンチャー教育、体験教育を背景に、企業や大学、学校教育、スポーツなど幅広い分野に対し、チームビルディングや組織開発、人材育成、ファシリテーション研修などを提供。理論や経験に基づく知識を提供するだけでなく、体験・体感型のワークを通し、受講者自身の気づきから学びを促す納得度の高い参加型の研修を展開。スポーツ分野においては、日本サッカー協会A級ライセンス講習会、日本バスケットボール協会S級ライセンス講習会において講師を務めるほか、サンフレッチェ広島スクールが『人としての成長』を目的に開催されるキャンプの企画運営を担うなど、成長をテーマとした研修を提供している。

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