流しのブルペンキャッチャーとして活躍する安倍昌彦氏がカープのドラフト指名選手を徹底解説。

 10月11日に行われた今年のドラフトでカープは育成を含め11名の選手を指名。プロの世界に飛び込んでくる選手たちは、どんなプレーを持ち味にしているのか。アマチュア球界を長年取材し指名候補選手に詳しい安倍昌彦氏にカープが指名した11選手の特徴、期待される役割などを語ってもらった。

 今回は育成ドラフト1巡目指名・新家颯(田辺高)、育成ドラフト2巡目指名・前川誠太(敦賀気比高)の魅力を、安倍昌彦氏の視点で紹介する。

◆カープの育成次第で大化けの予感漂う左腕

カープから育成ドラフト1巡目指名を受けた田辺高の新家颯投手。

 今年の夏の和歌山県予選。予期せぬチームから、サウスポーの好素材を発見して驚いたものです。和歌山・田辺高といえば、西武の超・強肩外野手で鳴らした西岡良洋の名前を思い出しますが、それから約40年経って現れたのはサウスポーの好素材。

 長いリーチをしならせて投げる速球は、現状アベレージ130キロ後半ですが、腕の振りを見るかぎり、大幅なレベルアップが見込めそうです。

 定評のあるカープの寮のご飯と、由宇の激烈トレーニングでパワーアップすれば、コンスタントに145キロ前後も期待できるはず。高速フォークのような激しいタテの動きを持つ威力あるスライダーは、プロでも勝負球として使えそうです。

 時間をかけて、確かな成長を目指してほしい投手。5年後の戦力に期待がかかります。

●育成ドラフト1巡目:新家颯(投手・田辺高)
しんや そう/2003年8月14日(18歳)/左投左打/182cm・80kg

◆二塁手の可能性も感じる動物的な身のこなし

カープから育成ドラフト2巡目指名を受けた敦賀気比高の前川誠太選手。

 父親は、三菱自動車京都当時、伊藤智仁投手(現ヤクルトコーチ)と共に投手陣を背負い、都市対抗のマウンドを何度も経験した社会人野球の快腕。その血をひいているせいか、とにかく『野球上手』な選手です。

 フィールディングで見せる、前川にしかできないような敏捷・柔軟で、一種動物的な身のこなし。三遊間深い位置からのスローイングで見せる肩甲骨の可動域の広さは、『父親ゆずり』。守備の際の軽快なフットワークとスピード感は、50m5秒台の数字以上のものを感じさせます。

 ここまでの本職はショートですが、これだけ自在な身のこなしがあれば、『二塁手』として大成する可能性も十分秘めていると感じています。

●育成ドラフト2巡目:前川誠太(内野手・敦賀気比高)
まえかわ せいた/2003年4月4日(18歳)/右投右打/176cm・68kg

●解説:安倍昌彦
あべまさひこ/スポーツジャーナリスト。1955年4月24日、宮城県仙台市生まれ。早稲田大高等学院、早稲田大学野球部にて捕手を務めた。卒業後会社勤務ののち、野球雑誌『野球太郎』の立ち上げに参加。ドラフト候補選手たちの投球を実際にブルペンで受けた上で選手たちの状況を語る“流しのブルペンキャッチャー”としての活動は現在も継続中。各種webマガジンでドラフト候補選手たちにまつわる連載を担当している。