2022年の幕が上がった。昨年はカープ、サンフレッチェ共に、思うような結果を残せなかったが、若手が台頭するなど、未来への希望を抱かせてくれる戦いを見せてくれた。また、東京五輪が開催されるなど、スポーツがおおいに盛り上がった一年になったと言えるだろう。

 広島アスリートマガジンWEBでは、これまでカープやサンフレッチェをはじめ、広島のスポーツの魅力を伝えてきた。そこで、昨年特に反響の多かった記事を振り返り、2022年のスタートを切る。

 今回は、カープの2021年シーズンを振り返った記事。ルーキーながらクローザーに定着した栗林良吏、高卒3年目で遊撃レギュラーを獲得した小園海斗など、未来のカープを担う“若い力”を取り上げる。(2021年11月29日掲載)

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シーズンを通して守護神として活躍した栗林良吏。

◆3連覇を知らない若い選手が躍動

 2021年、カープはレギュラーシーズンを63勝68敗12分のセ・リーグ4位で終え、3年連続でBクラスに沈んだ。

 2016年からのリーグ3連覇と比較すれば低迷と捉えられてもおかしくない。2016年にリーグMVPを受賞した新井貴浩は現役を引退。2017〜2018年に同賞を獲得し、チームをけん引した丸佳浩も、すでにチームにはいない。菊池涼介、田中広輔も気付けば30歳を超えた。

 プロ野球という世界で『勝ち続けること』がどれほど難しいのか、チームも、ファンも痛感したシーズンだったと言えるだろう。

 しかし、今季の戦いぶりを見ると、“3連覇”を知らない若い選手の躍動が目立ったのも事実だ。チームの新陳代謝、世代交代は着実に進んでいる。

 その代表例が、ルーキーながらクローザーに定着した栗林良吏だろう。昨秋ドラフト1位でトヨタ自動車からカープに入団。当初は“1年目から先発ローテに入れる完成度の高い即戦力右腕”という触れ込みだったが、佐々岡真司監督は、プロでなんの実績もないルーキーを、開幕から“抑え”に抜擢。結果として、これが見事にハマることになる。

 開幕2戦目の中日戦(3月28日)でプロ初登板・初セーブを記録すると、そこから6月13日のオリックス戦で失点を喫するまで、22試合連続無失点。新人による開幕無失点のNPB記録を更新した。

 以降も大崩れすることなく、チームのクローザーを担い、東京五輪では新人ながら侍ジャパンに選出。代表でもクローザーを任され、金メダル獲得時には胴上げ投手にもなった。

 最速155キロの直球に、栗林の代名詞にもなった決め球のフォーク、さらにはカットボールとカーブといった変化球も高いレベルで兼ね備える。結果論だが、これほど『クローザー適正』が高いことを入団時に予想した者がどれほどいただろうか。

 また、シーズンを通して、本拠地・マツダスタジアムでの自責点は0。37セーブはNPBの新人歴代1位タイ。来シーズン以降、首脳陣もしばらくは、9回を誰に任せるかで苦悩することはなさそうだ。

 栗林とドラフト同期、2位入団の森浦大輔もチームのカンフル剤として大きな存在感を放ったひとりだ。

 クローザー・栗林と違い、その仕事場は6~8回のいわゆる中継ぎ。同期のドラフト1位がセーブを積み重ね、大きな注目を集めるその裏で、栗林を上回るチーム最多の54試合に登板。開幕から貴重な左のリリーフとして17ホールド挙げた。栗林やDeNAの牧秀悟らの存在に隠れがちだが、例年であれば、森浦も新人王候補と言っていい堂々たる数字を残している。

 チームに活力を与えた若手は、何もルーキーだけではない。野手陣では高卒3年目の〝2000年生まれコンビ〟、小園海斗と林晃汰がともに一軍に定着。チームの将来に明るい光を灯している。

 小園海斗は開幕二軍スタートとなったが、4月22日に今季一軍初出場を果たすと、そこから好調をキープし、気付けば遊撃レギュラーの座を確固たるものとした。定評のあった守備面はもちろん、今季は打撃の確実性が各段にアップ。6月からは3番、シーズン終盤には2番と上位打線を任されるまでに成長を果たした。

 前田智徳以来となる『高卒3年目での打率3割』にはあとヒット一本足りなかったが、シーズンラストに3試合連続猛打賞を放つなど『持ってる男』ぶりも見せつけた。

 その小園と同期入団の林晃汰もまた、シーズン前半から三塁のレギュラー候補として出場を続けた。今季の一軍初出場は小園より約1カ月遅い5月18日だったが、その試合でいきなり2安打を放つと、2日後にはプロ初本塁打をマーク。6月終了時点で打率・362と、未来のスラッガーとして大ブレイクの兆しを見せた。

 夏場には疲れもあったのか調子を落としたが、9月に再び月間打率・301をマークするなど復調し、最終的には打率・266、10本塁打を記録。ちなみに、高卒3年目以内の2ケタ本塁打は堂林翔太以来、チーム9年ぶりの快挙。左打者に限れば、前田智徳以来、29年ぶりだった。

 投手では栗林&森浦のルーキー、野手では小園&林の高卒3年目コンビがそれぞれ躍動した2021年。彼ら4人以外にも、一軍の舞台で躍動した若手は数多い。今季プロ初安打、初本塁打を記録し、一軍で初のスタメンマスクをかぶるなど〝初モノ〟が続いた中村奨成、小園、林と同期で、今季外野の守備にも挑戦した羽月隆太郎、高卒2年目ながら先発ローテに定着し、4勝をあげた玉村昇悟といった『若い力』が台頭している。

 “3連覇の影”を追うのは、もうやめていい。これからは、彼ら『新しい力』が、チームを牽引していくはずだ。

文:花田雪