ここ数年、若手投手の台頭が目立ち世代交代の兆しを感じるカープ投手陣。若返る布陣の中で経験者の存在は重要だ。ここでは30代の先発投手、なかでも最年長の野村祐輔について大野豊氏の目線で語っていく。

節目のプロ10年目となった昨季、わずか8試合の登板で初の未勝利に終わった野村祐輔。33歳となる今年は投手陣最年長として雪辱を晴らすシーズンにしたい。

◆復活の期待がかかる1年。持ち味の制球力を取り戻せるか

 2021年シーズンはドラフト1位ルーキーの栗林良吏が一昨年の森下暢仁に続いて新人王に輝くなど、数多くの若手投手の台頭が目立ちました。そういう意味ではカープ投手陣はここ数年世代交代が進んでおり、30代の投手はわずか6人となりました。

 年齢的にズバ抜けたベテラン投手はいないものの、非常に若返った投手陣で戦うことになります。今回は改めて、30代の先発投手陣に触れていきます。

 まず先発陣を見ると、今年31歳を迎える大瀬良大地と九里亜蓮、そして最年長33歳となる野村祐輔の3投手になります。年齢的には投手として一番脂が乗り、先発の軸としてチームを引っ張っていかなければいけない3人です。

 大瀬良、九里に関してはここ数年先発ローテーションの中心として実績を残してきましたが、野村については年齢的に年長でありながらも、ここ数年、そして昨季の不振という状況もあって出遅れてしまっている印象があります。

 やはり野村も含めた3人で引っ張っていく先発陣を形成することができれば理想的ですが、いずれにせよ先発投手も若手がどんどんと伸びてきています。ドラフトでも即戦力投手を獲得しているだけに、どれだけこの3人がチームを引っ張っていけるかというところが、今シーズンの鍵になってくるでしょう。

 ベテラン投手となれば経験が武器となりますが、経験だけでは1年1年を勝負できない側面もあります。当然ながらベテランが若手の手本となる投球ができる状況をつくっていくことが必要だと思います。ですが、年が変わればまたチーム内での勝負が始まるわけです。

 そう考えると、経験と実績こそあるものの、ここ数年結果を残すことができていない野村の立場は、昨年よりも厳しいものになるでしょう。

 野村はもともと球速ではなく制球力と投球術で勝負するタイプの投手です。彼が復活するポイントを考えると、やはり持ち味である制球力にさらに磨きをかけるというところになるでしょう。その中でも、低いゾーンでのコーナーワークを身につけて、球のキレを取り戻すということも必要になってくると感じています。

 昨季を振り返ると持ち味の制球が乱れ、コースが高くなる傾向が目立っていました。そこを打者に捉えられて得点を奪われてしまうケースが見受けられました。もう一度自分自身の持ち味をしっかりと把握しながら、いかに特徴を取り戻せるかということが大事になってくると思います。

 いずれにせよ、野村にとって今季は『復活』がかかった1年になりますし、若手投手も多く出てきています。投手陣の最年長として相当な危機感を持ってやっていく必要があると思います。