球団歴代最多ホールドを記録し、3連覇を支えた鉄腕リリーバーが、昨年12月に現役を引退した。30歳の若さでの引退を惜しむ声も多かったが、鉄腕の体は限界を迎えていた。今回の独占ロングインタビューでは、カープでの12年間、引退を決めた本当の理由、そしてこれからの人生について赤裸々に語ってもらった。今村猛から贈られたメッセージを届ける。(全5回のうち5回目・取材は1月中旬)

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現役最後のシーズンとなった2021年の今村。この年、一軍出場はなく、登板は二軍での試合のみ。二軍で36試合に登板。2勝1敗、防御率は2.78だった。

◆挑戦したかった〝発信すること〟。今後も野球に携わっていきたい

─今後の活動について伺います。引退後、YouTubeチャンネルを開設されましたが、今後はSNSなどを通して幅広く活動される予定ですか?

「そうですね。野球を嫌いになったわけではないので、野球というスポーツに携わっていきたいと思っています」

─YouTubeではどんなことを届けていきたいと考えていますか?

「ファンの方は、これまでユニホーム姿の自分しか見ることがなかったと思うので、現状の活動報告を含め、プライベートなシーンを発信していきたいと思っています。あと、投球技術向上につながる動画も増やしていきたいです。こういうご時世なので、野球教室などの開催はすぐには難しいと思うので、オンライン上で、そういったアドバイスを届けていけたらいいなと思っています」

─具体的にはどういった内容を?

「例えば、投球シーンの動画を送ってもらい、〝こんな投手になりたい〟というイメージを教えてもらうことで、それに対して、僕なりの投球解析やアドバイスを伝えていけたらと考えています」

─個人に向けた野球のオンラインセミナーのようなものですか?

「将来的にそうなったらいいですね。日本の野球界の発展のためにも、僕にできることがあり、僕を求めてくれる方がいれば、力になりたいと思っています」

─将来的には野球の指導者に?

「将来できたらいいなとは思いますが、今はそこまで具体的に考えていません」

─YouTubeでは言語化して伝えるアプローチが大事になってきます。

「そうですね。僕は人見知りで、これまで人前で話すのは得意ではありませんでした。言葉足らずな面も多かったと思います。ただ、発信するということは新しく挑戦したかったことの一つなので、YouTubeでは悪戦苦闘する姿も含めて楽しんでもらえたらと思います」

─カープファンは今村さんにとってどんな存在でしたか?

「温かいだけではなく、ダメな時は叱咤激励がとんでくる。そんなところが僕はありがたかったですね。ファンの方の声は何度も背中を押してくれました。あと、2016年に優勝した時、TVで見た広島の街の光景は心に焼きついています」

─では最後の質問です。今村さんにとってカープは〝どんな場所〟でしたか?

「そうですね……(長い沈黙)。なかなか言葉にするのは難しいのですが〝大人になった場所〟ですかね。高卒でカープに入り、社会のこと、人付き合いの大切さなど、野球以外のことをたくさん学ばせてもらいました。いろいろなことを教えてもらい、人として成長させてもらった空間でした。カープに育ててもらい、感謝しています」

2021年の春季キャンプでの1枚。二軍スタートにはなったものの復活に向けて連日体をいじめ抜いた今村(左)。新たな球種にも挑戦するなど、最後までもがき続けた。

◆今村猛(いまむら たける)
1991年4月17日生、長崎県出身。30歳。清峰高-広島(2009年ドラフト1位)。プロ2年目にリリーフに転向すると54試合に登板。2012年には球団新記録となる29試合連続無失点をマークするなど、69試合に登板。オフには侍ジャパン入りを果たし、リーグを代表するリリーフへと成長した。2016年は勝利の方程式の一角を担い67試合に登板し、25年ぶりのリーグ優勝に貢献。リリーフとして球団史上初の3連覇を支えた。2021年12月に現役を引退。