昨季は85試合の出場に終わり、7年ぶりに100試合を切った。体を支配した悔しさが、松山の意識を変えた。自主トレで減量に成功し、生まれ変わった体で春季キャンプに突入。世代交代が進むチームだが、まだまだ若い選手に負ける気はない。鈴木誠也に代わる4番の期待も懸かるスラッガーの決意に迫った。
(全3回のうち3回目・取材は2022年2月上旬)
◆「4番を打つ」15年目の決意
(2回目から続く)
─今年でプロ15年目。チームが良い時期も低迷している時期も見てきた松山選手から見て、3連覇(2016年〜2018年)した頃のチームと今のチームに〝変化〟は感じていますか?
「うーん、そうですね……。昨季に関して言えば、〝チーム一丸となって戦う〟という意識が足りていなかったと思います。自分も含めて、選手一人ひとりがその気持ちをしっかり持つ必要があると改めて感じましたね。3連覇した頃は、チーム全員が、良い意味で楽しそうにワクワクしながら野球をしていました。そういった雰囲気がチームにあったからこそ、1試合1試合〝勝ちにいくぞ〟という気持ちで、一体感をもって戦うことができていました。そういった雰囲気や気持ちの部分が、特にここ2年は少し欠けていたのかなと感じています」
─たしかに優勝した頃は、たとえ負けていても、試合終盤でひっくり返す試合が何度もあり、他球団から〝逆転のカープ〟と呼ばれ恐れられていました。
「たしかにあの頃は、逆転の雰囲気がありました。負けている試合でも〝ここから追いつこう〟〝ここから逆転しよう〟と、選手一人ひとりが気持ちを切らしていなかったからこそ、流れを変えることができたと思います。そういう意味では、僕たちベテランを含めて、ベンチにいる全員で、良い雰囲気をつくり出していきたいですね」
─当時はベテランだった新井貴浩さんが率先して声を出されていました。
「そうですね。新井さんの存在も大きかったですし、本当に良い雰囲気のなかで野球ができていました。自分のほかにも、当時を知っている選手も多いので、良いものをもう一度思い出して、チーム一丸となって試合に挑んでいきたいと思います」
─当時を知る選手の一人、小窪(哲也)さんが、コーチ(一軍内野守備・走塁コーチ)としてカープに帰ってこられました。
「同学年ですしうれしいですね。若い選手に慕われていますから、チームに与える影響も大きいと思います」
─今季はずっと4番を打ってきた鈴木誠也選手が抜けたことで〝4番争い〟も注目されています。4番を経験したことのある松山選手への期待も大きくなってくると思います。
「正直なところ、僕はあまり打順にこだわっていません。ただ、これまで一軍でクリーンアップを打たせてもらった経験がありますし、誠也が抜けることで、4番の座を狙っていきたい。狙っていかないといけないと感じるようにはなりました」
─松山選手が描く〝理想の4番〟とはどういった打者でしょうか?
「僕にとっての理想の4番は新井(貴浩)さんですね。新井さんは長距離打者のイメージがあるかもしれませんが、それ以上に〝チームを活かす打撃〟ができるのが新井さんのすごさだと思っていました。4番を打つことが多かった2016年は19本塁打で101打点ですから、いかにつなぐ打撃をされていたかを数字でも証明されています。走者を次の塁に進め、後続打者に託す。そういう打撃ができる4番打者が理想です」
─今季のキャンプは有観客で行われるなど、少しずつですがいつもの日常が戻ってきています。選手の皆さんが受ける影響も大きいのではないですか?
「やっぱりファンの方あってのプロ野球だと思っているので、ファンの皆さんの前で野球ができるのは素直にうれしいですね。まだ満員に埋まることは難しいとは思いますが、ファンの方がいるといないとでは、僕たち選手の気持ちの張りも違ってきます。今年もカープファンの皆さんの前でプレーできることに感謝して懸命にプレーしたいと思います」
─今季は昨シーズンの雪辱を果たす一年にもなってきます。新たな気持ちで挑む今シーズンの目標を教えてください。
「チームとしては、もう一度みんなで一丸となって、リーグ優勝とその先にある日本一を目指して戦っていきたいです。個人の目標としては、本塁打ではなくて、得点圏打率と打点にこだわっていきたいと思っています。毎年のように言っている目標ですが、『3割・100打点』に少しでも近づけるように頑張ります」
◆松山竜平(まつやま りゅうへい)
1985年9月18日(36歳)/鹿児島県出身/176cm・100kg
右投左打/外野手/鹿屋中央高-九州国際大-広島(2007年ドラフト4巡目)