中日黄金期とも言える落合監督時代のチームを攻守に渡り牽引してきた井端弘和氏。緻密で正確、時に積極果敢なプレーで他球団から恐れられた井端氏に、ここ数年のカープ野球と、今季、優勝するためにカープが目指すべき野球、そしてそれを実現するうえでカギを握る選手とポイントを聞いた。(前編)
※シーズン開幕前に取材

リーグ3連覇を成し遂げた頃のような攻撃的な走塁を活かした野球の復活が、4年ぶりのリーグ優勝を目指していくうえで大事なポイントとなってくる。

◆井端氏が考える『足を使った野球』とは・・

 鈴木誠也という軸が抜け、さらに新外国人選手も来日遅れと、開幕に向けて計算が立ちにくい状況なので、打線に関してはスタートダッシュに苦労をするのではないかと思います。やはり3割30本を打っていた選手がいなくなるのはチームにとって大きな痛手です。

 鈴木が抜けた今の戦力で私がオーダーを考えるならば、1番・小園海斗、2番・菊池涼介、3番・西川龍馬という上位打線を組むと思います。オープン戦を見ると、小園は主に5番で起用されていますが、打席に立つ回数が多い1番打者で使うのも面白いと思いますね。

 問題の4番ですが、カープの将来を考えると、昨季10本塁打を放った林晃汰が調子を上げてきて4番に座るのが理想でしょう。ただ、4番にかかる重圧はこれまで以上に大きくなると思うので、そういった意味では、5番打者も重要です。5番にはキャンプでは出遅れましたが、昨年セ・リーグ2位の打率(.315)を残した坂倉将吾が入ることになるでしょうね。ただ、首脳陣がオープン戦の状況を見て無理矢理招集したようにも見えたので、シーズンが始まって坂倉に影響が出なければいいなと思います。

 昨年のカープのチーム打率は12球団トップ(.264)でした。一方で得点はリーグ3位の557得点。この数字からも分かるように、つながりを欠いている印象がありました。点が取れるべき場面で取れない試合がありましたし、1点は取れても2点、3点と続かないシーンも数多く見かけただけに、順位も低迷してしまったのではないかと思います。

 足を使った機動力野球がカープの持ち味ですが、私が考える『足を使った野球』というのは、盗塁の数などではなく、ランナーが一塁の場面で安打が出れば、一塁走者は三塁まで進む、常に先の塁を狙う攻撃です。足を使って、一・二塁ではなく、一・三塁になれば得点のチャンスは大きく広がります。

 カープが3連覇していた頃は、一・三塁というシーンが非常に多かった印象があります。また、落合(博満)監督の下でプレーしていた頃は、一塁走者に出れば、盗塁も含めて、なんとか一・三塁の状況をつくろうと常に考えていました。この形(走者一・三塁)になるかならないかで、次の打者の気持ちも変わってきますし、相手投手に与えるプレッシャーも大きくなります。ここ数年のカープはそうした理想の形がなかなかつくれていないだけに、今年もそこが課題になってくると思います。

◆井端弘和(いばた ひろかず)
1975年5月12日生、神奈川県出身。亜細亜大から1997年ドラフト5位で中日に入団。3年目にレギュラーに定着すると、落合博満監督が就任した2004年には荒木雅博と一、二番と二遊間でコンビを組みベストナインとゴールデン・グラブ賞をダブル受賞。以降も粘り強い打撃と堅実な守備で活躍した。2014年に巨人に移籍し2015年限りで現役引退。2017年から日本代表コーチを務め、東京五輪では内野守備・走塁コーチとして金メダル獲得に貢献した。

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