2018年以来のAクラス、優勝を目指す今季のカープ。鈴木誠也が抜け、世代交代も叫ばれるなか、優勝に必要なものは何か。カープ投手陣を支え続けた元正捕手・石原慶幸氏は、世代にこだわらず、全員で勝ちにいく姿勢が重要と語る。今季のカープ躍進のカギを握るのは!?(前編)
※シーズン開幕前に取材

昨季の後半戦、プロ初完封を達成するなど、後半だけで4勝をあげた床田寛樹。今季はシーズンを通して、先発ローテで投げることが期待されている。

◆先発3本柱に続く、6年目・床田寛樹の成長に期待

 3年連続Bクラスという現状から脱却し、優勝を目指すうえで、まず必要なのが『投手力』です。その中でもやはり、大瀬良大地、九里亜蓮、森下暢仁の先発三本柱がしっかりと働けるかどうかは今季のカープの戦いぶりに大きく影響するはずです。春季キャンプ中から3投手には注目してきましたが、開幕に向けて順調に仕上げてきているなという印象です。

 まずは大瀬良。彼の調子のバロメーターは、真っ直ぐでファウルを打たせることができるかどうか。オープン戦での打者の反応を見る限り、手応えを感じているように思えます。本人が「磨きをかけた」と言っているフォークの状態も良さそうなので、今季もエースとして活躍してくれそうです。

 九里に関しては、オープン戦で少し集中打を浴びるシーンもありましたが、彼の場合はそもそも“打たせて取る”投球スタイルですから、そこまで気にする必要はないと思います。結果というよりも縦横の揺さぶりを考えながら、開幕に向けて全球種を試しているのかなという印象を受けました。

 森下はオープン戦で登板を重ねるごとに状態を上げてきています。シーズンに照準を合わせ、しっかりと段階を踏んでいるので全く心配していません。

 そのうえで、3人に続く存在として期待しているのが床田寛樹です。もともと良いものを持っている投手ですし、真っ直ぐも変化球も器用に投げることができます。ただ、器用であるがゆえに疲れが出てくると小手先で投げてしまう悪い癖もありました。ただ今季は体を目いっぱい使って投げることができており、それが球のキレや勢いにつながっています。特にチェンジアップ、パームといった遅い球をゾーンにきっちり投げ切ることができており、これが打者にとっては厄介な球になっています。

 三本柱と床田に次ぐ5~6番手については、一軍と二軍を含めて、どの投手にもチャンスがあると言えます。小林樹斗、玉村昇悟、新人の森翔平らを筆頭に、高橋昂也や遠藤淳志らが競争することで先発陣に厚みが出てきます。そこで結果を出した投手が次のチャンスをもらえ、先発ローテに定着してくるはずです。

 今季は延長制が復活するので、先発投手の役割はより重要になります。大瀬良、九里、森下の3人にはしっかりと試合をつくってもらいながら1年間を通して投げてほしいという期待があります。もちろん、床田も同じような活躍ができれば、リリーフの負担を減らすことができるので、『三本柱+床田』には大いに期待したいですね。

 リリーフ陣に目を向けると、クローザー・栗林良吏につなぐセットアッパーの存在が課題にあがりますが、現時点では絶対的な存在がいないのが現状です。筆頭候補は島内颯太郎、塹江敦哉の2人ですが、先発ローテの5~6番手と同じように、調子の良さやデータを見ながらやりくりすることになるでしょう。

 黒原拓未、森、松本竜也といった即戦力ルーキーにかかる期待も大きいです。なかでも松本は、ある程度まとまりがあるだけに計算が立ちそうな印象もありますが、こればかりは開幕してみないと何とも言えません。打者の状態が上がってくる中で、どう対応していくかが彼らルーキーにとって最初に超えなければいけない壁となります。とはいえ、ここまでしっかりと結果を出してアピールしているので、このままシーズンも乗り切ってほしいですね。

◆石原慶幸(いしはら よしゆき)
1979年9月7日生、岐阜県出身。県立岐阜商高-東北福祉大-広島(2001年ドラフト4巡目)。入団2年目に一軍に定着すると、長年カープの主力捕手として活躍。2009年にはWBC日本代表に選出。2016年には正捕手として25年ぶりのリーグ優勝に貢献し、セ・リーグ最年長の37歳でゴールデン・グラブ賞を獲得。2020年限りで現役引退。現在は広島テレビプロ野球解説者として活動している。