思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回スポットを当てたのは、球場で見かける乗り物。リリーフカーからセグウェイまで、個性豊かな乗り物たちを、オギリマ視点でゆる~く取り上げる!
◆球場で活躍する「はたらくくるま」に、令和仕様の新車が登場
今季から観客数の制限がなくなり、マツダスタジアムにもコロナ禍以前の熱気が戻ってきたように見える。そのような中、球団マスコット・スラィリーのパフォーマンスに大きな変化があった。これまではセグウェイだったスラィリーの車が、新しくなったのである。
新車は、赤と金のファイヤーパターンにペイントされたホットロッド風の電動カート、『スラィリーカート』だ。試合前後やイニング間などに球場内を走り、助手席や後部座席に乗ったスラィリーがファンサービスを行っている。球場のオーロラビジョンでは、スラィリーと黒子さんが悪戦苦闘しながらカートを作り上げる動画が映し出され、観客を楽しませていた。
こうして球場内を走るカートを見ているうちに、「そういえば昔の市民球場ではリリーフカーが走っていたな」ということをふと思い出した。マウンドから離れた位置にあるブルペンから救援投手を乗せて運ぶリリーフカーは、現在では12球団の本拠地のうち、横浜スタジアム、ZOZOマリンスタジアム、甲子園の3球場でのみ使用されている。新しく建設される球場は、ブルペンがベンチ裏に作られることが多いからだ。カープでも、マツダスタジアムが新設された際に、リリーフカーもその役割を終えている。
私が野球を見始めた頃、旧市民球場のリリーフカーはこんもりとした白い形の乗り物で、そごうデパートのマークが前面に大きく入っていた(そのため、私はこれを勝手に“そごうカー”と呼んでいた)。他球場のリリーフカーと違って無線操縦のため運転手がおらず、ピッチャーを降ろすとひとりでに帰っていく姿に、近未来的な雰囲気を感じたものだ。その後、旧市民球場のリリーフカーは黄色い有人運転のカートに変更され、2008年シーズンまで使用された。
球場内を走る車はリリーフカーだけではない。グラウンド整備の車はもちろんのこと、常日頃から気になっているのが、巨大な『赤いきつね』を後ろに搭載して場内を一周する宣伝カーである。思い返してみれば、旧市民球場の時代は軽トラックの荷台に巨大な『カップヌードル』が載せられていた気がする。時代やスポンサー企業が変わっても、「試合中にインスタント麺を宣伝する」というスタンスは変わらないということだろうか。
スラィリーは、この『赤いきつねカー』の助手席に無理やり座って場内を回ることもあった。しかし今シーズンに入ってからは、5回裏終了後に『赤いきつねカー』と『スラィリーカート』が一列に並んで場内を走っている。素敵な新車を得たスラィリーは、もう『赤いきつねカー』に乗ることはないのかも知れないと思うと、少し寂しくもある。
『スラィリーカート』のボンネット部に付けられたマスコットは、今後色や形が変わると報じられている。こうした変化も楽しみにすると同時に、歴代カープの『はたらくくるま』たちをミニカーのセットとして商品化してもらえないかという願望を、私は今、抱いている。
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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。