プロ10年目のシーズンは、プロ初の開幕スタメンと共に幕を開けた。昨年まではユーティリティープレーヤーとして勝利に貢献してきた上本崇司。レギュラーのチャンスをつかみ取りつつある背景には、考え方の変化があった。経験を重ね、紆余曲折の道のりを経てたどり着いた思考とは。存在感を発揮する、背番号0ならではの哲学に迫る。(全3回のうち1回目・取材は2022年4月上旬)

3月13日の日本ハムとのオープン戦では、サヨナラ本塁打を放つなど、オープン戦で.385を高打率をマーク。結果を残したことで、プロ初の開幕スタメンを勝ち取った。(今季の春季キャンプで撮影)

◆“打つと決めた球しか振らない”と決めている

─今季は開幕戦からスタメン出場が続いています。どんな気持ちで日々の試合に挑んでいますか?

「10年目になりますが、今年のように開幕から起用し続けてもらうのは初めてなので、スタメンで試合に出場する難しさを感じています。ただ、グラウンドに立つ回数が多いということは、それだけ責任を持ってプレーしなければいけません。守備機会も多いので、チームに迷惑をかけないように、投手を困らせないようにということを常に考えています」

─開幕戦のスタメンはいつ伝えられましたか?

「数日前に、もしかしたらあるかもしれないとは言われていましたが、実際にスタメンを知らされたのは試合当日です」

─ここまで特に打撃面で良い成績を残されています。打撃では、今年どこが良くなったと感じていますか?

「気持ちの面で大人になれたのが大きいかもしれません。若い頃は打席に立つ機会も少なかったので、〝打たないとやばい〟〝振らないとやばい〟という焦りしかありませんでした。ただ、徐々に打席に立つ機会が増えてくるうちに、打席での考え方が変わってきました。シンプルに考えられるようになったんです」

─ちなみに今は、どんな考えを持って打席に入っているのでしょうか?

「今シーズンは2ストライクに追い込まれるまでは〝打つと決めた球しか振らない〟と決めています。そして2ストライクに追い込まれたら、〝四球を取れれば良い〟とシンプルな考え方をするようにしています。なので、際どい球もカットしてファールにできていますし、低めの球にも手を出さないようになりました」

─狙い打ちという面で印象に残ったのは開幕3戦目のDeNA戦。1点を追う9回の山﨑康晃投手との対戦です。4球目の直球を右方向に打つ(結果は二塁への内野安打)のですが、直球を待っていたかのような鮮やかな右打ちでした。

「追う展開で2死二塁。次につなぐために、山﨑投手の変化球は絶対に振らないと決めていました。ツーシーム系の球は打ちにいっても良い結果にはなりづらいと思っていましたし、この日の山﨑投手は変化球でストライクをとれていませんでした。なので〝ストレートを狙おう〟と決めて待っていた結果、うまく打球が野手のいないところに飛んでくれました」(続く)

◆上本崇司(うえもと たかし)
1990年8月22日(31歳)/広島県出身/ 170cm・73kg
右投右打/内野手 / 広陵高-明治大-広島(2012年ドラフト3位)