通算2000安打、トリプルスリー達成など数々の記録を打ち立てた野村謙二郎氏。球団史に名を残す経歴を持つ野村氏はファンの記憶に残る名ショートだ。

 ここでは野村氏の独占インタビューをお届けする。ショートの定位置を獲得しつつある小園海斗、そして、これからのカープを担う選手たちへ贈る言葉とは。

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現役時代、走攻守三拍子揃ったショートとして活躍した野村謙二郎氏。

◆これからショートを守る選手も、『目配り』『気配り』を念頭に、失敗をするたび成長してほしい。

─2022年、カープでは若い小園海斗選手がショートを守っています。小園選手の活躍を、どのように見ておられますか?  

「高卒で入団してきて、22歳でショートを守っていて本当にすごいと思います。毎試合いろいろなことを経験しながらプレーしていると思いますが、“守備の怖さを知って、丁寧さも出てきた”と感じます。そういう意味では毎日ゲームに出ることは大事で、その中での失敗がすごく活かされているのでしょう。もちろんミスもあると思いますが、確実に上手くなってきていると思いますし、僕らカープOBとしては、後輩が順調に育っているなという目で見ています。また、先ほども言いましたが、野手に必要なのは『打てなくてもしっかり守る』ということです。打てなかったときに打撃のことを考えていて、突然打球が飛んできてミスにつながったり、そういうことは僕も経験がありますし、実際にあると思います。ですが、守りの集中力も見ていて感じるので、まだまだこれから成長していくと思いますね。一方で打撃面ですが、開幕当初から序盤は打率1割台と苦しんでいましたが、徐々に調子を上げてきています。守備の重みを持ちながら、打撃の調子をあれだけ戻すことは、並のメンタルで出来るものではありません。いろいろな経験をしながら、もっともっと大きく育ってほしいですし、日本代表に選ばれるような選手に成長してほしいですね」

─最後に野村さんが考えるショートの魅力を聞かせてください。

「ショートはいろんな気配り、目配りが求められるポジションです。以前サッカー番組で、中盤の選手がスペースにボールを出す場面で、その選手の目の動きを追っているシーンがありました。右足、左足、正面が空いているとか、誰がフリーだとか、背後も見ながらということを紹介していました。これを見ていて『ショートの選手を追うとどのくらい周囲を見ているのか?』を検証してほしいと思ったくらいです。ショートは外野手の位置、サードの位置、セカンドとの距離感、投手の心理状況、捕手のサイン、バックスクリーン上のフラッグの風向き、ファールが飛んでいく打球の伸びと失速具合など、さまざまなことを見ていますし、僕自身ショートを守る中で自然と見られるようになりました。当然他のポジションにも言えることですが、いろんなことを考えながらプレーするところがショートの醍醐味だと思います。もちろんこれらはすぐに出来るわけではありません。若い小園のように、失敗をするたびに覚えていくこともたくさんあります。今ショートを守っている選手も、これからショートを守っていく選手も、気配り、目配り、準備を念頭においてほしいと思います」

<プロフィール>
野村謙二郎●のむら・けんじろう
1966年9月19日生、大分県出身。
1988年ドラフト1位で広島入団。入団2年目にショートに定着すると、長年にわたって1990年代のカープ内野陣をけん引した。トリプルスリーを達成した1995年にはショートとして球団初のゴールデングラブ賞を獲得した。走攻守三拍子揃った球界を代表するショートとして長年活躍し、2005年には通算2000安打を達成し、同年引退。
2010年から5年間カープ監督を務め、2013年にはチームを16年ぶりのAクラスに導いた。現在はプロ野球解説者として活動中。