新井貴浩監督の就任会見から3週間。コーチ人事も続々と発表され、新体制への注目と期待はますます高まるばかりだ。広島アスリートマガジンでは、これまで、現役時代〜引退後にかけて新井監督の声をファンへ届ける独占インタビューを掲載してきた。ここでは、2019年1月号『永久保存版 新井貴浩』より、インタビューの一部を再編集して掲載する。
2004年までの大不振から脱却し、本塁打を量産した2005年の新井。初タイトルへと爆進するスラッガーは、シーズン終盤のインタビューで、確かな成長を遂げた自身の打撃について語ってくれた。
◆本塁打増加の秘訣はインコースにあり
7月7日、阪神・金本知憲に1差をつける22号ホームランを放った新井は、この時点で本塁打王争い単独トップに立った。逆転弾や空を撃ち抜く大アーチ。数々の印象深い本塁打を放ってきた新井にとって、今季印象に残る本塁打について話を聞いた。
「やっぱり開幕直後のホームランですね。あの2本がなかったら試合にも出られてないでしょうし。2022年、僕が全試合に出場したシーズンも開幕戦はベンチスタートで、代打で勝ち越しタイムリーを打ったんですが、開幕第3戦もあの時の心境とダブりましたね。試合に出たい、出たからには絶対に打ってやる、と。1本目はインコース真っ直ぐ。打った瞬間、行ったなという手応えはありました。2本目はノーツーから見逃したらボールかな、というぐらいの高めの真っ直ぐだったんですが、右中間へ…。これもよく覚えてますね。ゲーム展開も競っていましたからね。あとは桑田さんから打ったホームランですかね(7月3日)。長嶋さんから褒められたので印象に残っています。飛んだ距離も僕の中では一番かもしれませんね。印象に残るホームランは勝ち試合の場合が多いですね」
入団1年目からの本塁打数は7・16・18・28本。そして4番に座った一昨年が19本。さらに昨年が10本塁打。プロ7年目にしてついに和製大砲として目覚めた新井は、軸で回転する打撃フォームを自分のものにすることで、これまでできなかったことができるようになってきた。それは……。
「インコースを攻められても昨年までのように苦労しないでさばけるようになったというのはありますね。そのぶん、自然とホームラン数も増えているんだと思います。なぜかと言ったらやっぱり軸で回転して打つ、前に突っ込まない、そんなイメージで練習に取り組んできたからではないでしょうか。なかなか簡単にはいきませんよ。前半戦ぐらいまでは結構インコースに来てたんですけど最近はねえ、来なくなりました。インコースに来るならボール球で最後は外っていう形になっているのでそれにも対処していかないといけないし、イタチごっこだと思うんですよね。それで今度はアウトコースに意識を置いてそれを長打にできれば、またインコースに来るだろうし。攻められ方が変わってきているな、という印象はありますね 。気持ちが焦れば焦るほど突っ込みがちになるんです。それでインコースが窮屈になる。バットが出てこなくなる。インコースを気にしだしたらバッティングが全部崩れてしまうから外の甘い球も打てなくなる。真ん中付近でも打ち損じてしまう。それが今シーズンは今までよりさばけるようになったかな、と。あとは高低への対応ですね。もともと僕はローボールヒッターで、入団してからずっと低めをホームランにしたりしていたんですが、今年は少々ボール気味でも高めを振っているんです。ローボールを振ればゴロになる確率も高い訳ですから今年はちょっと意識して変えています」