2010年から5年間カープを率い、25年ぶりの優勝への礎を築いた野村謙二郎元監督。この特集では監督を退任した直後に出版された野村氏初の著書『変わるしかなかった』を順次掲載し、その苦闘の日々を改めて振り返る。
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 大型連敗で苦しんだことからわかるように、リーダー不在というチームのウィークポイントは解消されていないままだった。6月の交流戦時期、まだキクも丸もリーダーと呼べる存在ではなかった。僕は彼らにリーダーになってほしいと思っていたが、当時の彼らは自分自身との戦いに躍起になっていた。

 リーダーになるには気質や性格とともに、確固たる成績でチームメートを納得させることが必要になる。前年レギュラーの座を確定させた2人にとって、2014年はその立場を絶対的なものにするため、さらなる成績のアップが求められていた。ゆえに自分のプレーに集中して、そこでいっぱいいっぱいになってしまうというのは、僕には理解できるところがあった。

 実際この年、2人の成績は大幅にアップした。丸は初の3割を達成し、キクはセ・リーグ打率2位となる.325を記録。今年これだけの成績を残したことで彼らはリーダーを名乗る資格を手に入れた。2015年以降、彼らは好むと好まざるとにかかわらず、チームの中で担がれる存在になっていくはずだ。

 それになんといっても彼らはリーダーに必要な条件をすべてクリアしている。怒れる、明るい、技術を身につけている、身体が強い、試合を休まない―この中で一番大事なのは、とにかく試合を休まないこと。そういう意味で“キクマル”の2人は長年リーダー不在で苦しんできたカープにとって待望の存在だと言っていい。