昨シーズン、23年間の現役生活を終えた1人のサッカー選手がスパイクを脱いだ。

 2000年からサンフレッチェ広島で活躍し、日本代表としてW杯にも出場したDF・駒野友一だ。J1、J2、J3、JFLとすべてのカテゴリーを経験したベテランは、今シーズンから指導者として新たなキャリアをスタートさせる。

 今回は、駒野コーチと親交の深いOB・吉田安孝氏がインタビュアーとなり、広島復帰を決めた裏側から、コーチとしてのビジョンまでを対談形式でお届けする。

 第1回はこちら。
 第2回はこちら。

クラブを離れてからも、広島の試合はよくチェックしていたという。

大舞台で味わった苦い経験・・・元W杯戦士が見た森保ジャパン

吉田「昨年カタールで開催されたW杯は見ていた?」

駒野「はい、見ていました」

吉田「元・W杯戦士として、今回の森保ジャパンを見た率直な感想は?」

駒野「大会前は『死の組』とも言われていましたが、ドイツとスペインにも勝つことができましたよね。まずは勝つということが大事なので、『厳しい状況であっても勝てるんだ』と証明できたドイツ戦での逆転勝利などは、日本の成長につながっていくのではないかと思います。選手たちも海外に出て厳しいリーグで戦っているので、個人のレベルも上がっていると思いますし、もともとあった日本の組織で守るというスタイルがうまく融合できたのかなと感じました」

吉田「今回も、コマが出場した2010年W杯南アフリカ大会と同じように、結果はベスト16。最後はPKで敗れるという展開だったよね。思い出したくないかもしれないけど、今回のW杯を見ていて、やはりあの試合を思い出す部分もあったのかな」

駒野「今回のW杯に限らずPKの場面では自ずと話題になるので、それで思い出すことはありますね。今回もPKで敗れてしまいましたが、予選リーグでは日本はまだまだ強い一方で、一発勝負になった時に勝ち切るための力が足りてないのではないかとは感じています。それが、日本代表のこれからの課題になっていくのではないかと思います」

吉田「今大会のPKは選手の立候補制だったそうだけど、コマの時はどうだった?」

駒野「僕たちの時は、監督が指名しましたね。僕は3番目のキッカーに指名されました。(イビチャ・)オシム監督の時のアジア杯でもPKを蹴りましたし、パラグアイ戦の前日練習でもしっかり蹴れていたので自信はあったのですが、結果として、ああいう形になってしまいました。PKはキッカーとGKの駆け引きもありますし、実力といえば実力なのだと思います。ただ、今回のクロアチアもそうですし、僕たちが敗れたパラグアイもそうですが、対戦相手はPKを全部決めているんです。そういった部分では相手の方が技術が高かったということだと思うので、やっぱり『やり続ける、蹴り続ける』ということが大切なのではないかと感じました」

吉田「これからは指導者という立場で未来のサンフレッチェをつくっていくことになるわけだけど、コマは今のサンフレッチェをどんな風に捉えている?」

駒野「昨シーズンは好成績を残していますし、ルヴァン杯では優勝もしていますよね。やっぱり、良いサッカーをしているからこそこういう成績が出せているんじゃないかなと思っています。詳しい戦術の部分は実際に中に入って、見てみなければわかりませんが、すごくおもしろいサッカーをしていますよね」

 第4回へ続く。

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