昨シーズン、23年間の現役生活を終えた1人のサッカー選手がスパイクを脱いだ。

 2000年からサンフレッチェ広島で活躍し、日本代表としてW杯にも出場したDF・駒野友一だ。J1、J2、J3、JFLとすべてのカテゴリーを経験したベテランは、今シーズンから指導者として新たなキャリアをスタートさせる。

 今回は、駒野コーチと親交の深いOB・吉田安孝氏がインタビュアーとなり、広島復帰を決めた裏側から、コーチとしてのビジョンまでを対談形式でお届けする。

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久しぶりの再会だったという吉田氏(写真・右)と駒野コーチ。思い出話にも花が咲いた。

影響を受けたオシム、ペトロビッチ。新コーチが描く理想のチーム像

吉田「2024年には新スタジアムの完成も控えていて、ここから再び黄金期が到来することを期待するファンも多いはず。コマとしては、できれば自分がユニホームを着ている時に新スタジアムでプレーしたかったかもしれないけど……(笑)」

駒野「そうですね(笑)」

吉田「こうしたサンフレッチェを取り巻く状況の変化は、どう感じる?」

駒野「エディオンスタジアム広島でプレーしていた時も、サポーターの声援はすごく後押しになりました。エディスタもプレーしやすい良いスタジアムではあったんですが、陸上競技のトラックがある分、やはり客席とは距離がありますし、選手の声もサポーターに届きづらい部分はありました。専用スタジアムであれば、選手とサポーターの距離はぐっと近くなりますし、もっと後押しをしてもらえるようになるのではないかと思います。サッカー選手であれば、誰もが『専用スタジアムでやりたい』という思いは持つのではないでしょうか」

吉田「コマは、磐田や福岡といった専用スタジアムを持つクラブでのプレー経験があるけど、やっぱり全然違うものなのかな」

駒野「全然違いますね。選手もサポーターもお互いを身近に感じられるので、より一体感を味わえると思います」

吉田「複数クラブを経験したコマだけど、あらためて、最初に広島を出ることになった時の気持ちと経緯を教えてもらえる?」

駒野「僕が磐田に移籍した2008年は、広島がJ2に降格した年で、ちょうど2年後にW杯も控えているというタイミングでもありました。どちらを取るかを悩んだ結果、その時の僕はW杯を選んだんです。本当に、迷いに迷ったのですが、自分の中でW杯に出たいという強い思いがあったので、広島を離れることを決めました」

吉田「でも今思えば、良い選択だったよね」

駒野「そう言ってもらえるとうれしいです」