4月8日に開幕するプロ野球独立リーグ ルートインBCリーグ。ここでは注目チームの監督の今季にかける想いに迫る。

 第4回目は、かつて巨人で活躍していた栃木ゴールデンブレーブスの寺内崇幸監督。南地区で最長政権の5年目となる指揮官から王座奪還への思いを聞いた。

巨人で活躍した、栃木ゴールデンブレーブス監督の寺内崇幸氏。

―ここまでキャンプインから1カ月経ちましたがチームの仕上がりはいかがですか?

 「そうですね、独立リーグのシステムとして開幕1カ月前からキャンプインするので100%仕上げるというのは難しいです。みんながNPBを目指していくリーグなので、MAXに仕上げるだけが調整ではないと考えています。この時期にチームがするべきことは、まずは4月から戦える状況にすること。そういった点で今年に限って言えば、選手たちが自主性を持って練習に取り組んでいるように見えます。良い雰囲気で準備ができているので、チーム的には面白いかなと期待しています」

―寺内崇幸監督自身5年目シーズンとなりますが、寺内監督にとってBCリーグはどのように映っていますか?

 「一言で言うのは難しいのですが、プロ野球でありながら、独立リーグならではの点も多くあるなと感じています。選手はプロ野球選手でありながら、たくさんの方に支えていただき、そういう方々と密接に関われるというのが魅力です。より選手には頑張ってほしいですし、自主的に地域貢献活動に参加する意欲を持ってほしいなと思います」

―『地域』という点では、栃木ゴールデンブレーブスは非常に熱いファンが多いイメージがあります。

 「ファンの熱さ、応援いただいているファンの数というのは、本当に1番なのではないでしょうか。本当にありがたいです。応援の力を現場はとても感じています。コロナ前は大声援を球場で送ってもらうことで、試合に臨む意欲になっていたと思います。声援があって良い緊張感があって球場に一体感があると、良いプレーがたくさんできることもあります。私たちは応援していただくために、試合の時だけでなく練習の時から良い準備をしなくてはならないですね」

―BCリーグは毎年選手の入れ替えが激しいこともありますが、チームづくりで大切にしていることはありますか。

 「球団によって方針も1年ごとに変わるので一概には言えませんが、栃木はNPBに選手を送り出すというのが念頭にあります。その中で私は『考え方』を選手に伝えることが大事だと考えています」

―『考え方』というと?

 「たとえば、多くの方に支えられて野球ができているという意識を持つとか、そういうことは浸透させるべき『考え方』だと思っています。全員がNPBに行ければ良いですが、残念ながらそうではありません。野球が終われば、社会人として社会に出ていくことになります。そうなった時に、『考え方』というところがしっかりしていれば、周りの人に助けてもらえるような人になれるのではと考えています。周りのことを考えられる人になると、自然と野球も上手くいくと思っています」

―野球の技術だけでなく、思考や人間性という点も大切だということですね。

 「そうですね。実際に私が社会人時代に日本代表を経験させていただいた時を振り返ると周りの選手はプレーも優れていましたが、それ以上に考え方・人間性が優れていると思いました。そういった点が優れているから、野球も上手くなるという考え方もできるなと感じていましたので、若いうちからそういう考え方を学んでほしいなと思っています」

―その他に、選手へ伝えていることはありますか。

 「『経験の仕方』、『失敗の仕方』という点はよく選手に伝えています。人には色々なターニングポイントがあって、立ち止まって受け入れ、それを経験として積み上げるフェーズがあると考えています。選手にはそういった意味で、失敗や経験をたくさんしていこうと伝えています。でも、ただ失敗するのではダメだよとも伝えます。準備をしてから実践し、そこから経験を得るから意味がある。次につなげるための挑戦をしてからトライすることで、さらにその先の思考力が養われると考えています。そういったプロセスを踏んでいくことで、成功体験を積み重ね自信を持てるようになるのだと思います」

―以前の記者会で、入江空投手と尾田剛樹外野手を期待の選手としてあげておられました。

 「その2名は変わらずに期待しています。入江は左腕で150キロ投げられるという点だけでも秀でた才能だと言えます。尾田については、今年中日に入団した樋口正修(元埼玉武蔵ヒートベアーズ)と、走力的には遜色ないものを持っています。もっと言うと2019年に周東佑京選手(ソフトバンク)が打った三塁打のタイムと類似したタイムを出してるのです。脚という点ではNPBで勝負できるクラスだと感じています。その他にも、石川慧亮、鳥居大紘など楽しみな選手がたくさんいますね」

―捕手陣は特に新しい選手が多いです。

 「今年は投手陣が豊富で多彩な分、少しリードするのは大変かと思いますが、これも良い経験にしてほしいです。シーズンが始まって最初は少しバタつくかなと思うこともありますが、チームで支えながらコミュニケーションを取っていってほしいですね」

―今年は新キャプテンに鳥居選手が就任しました。

 「今年は選手会長に佐々木斗夢を置き、キャプテンは鳥居かなと思い指名しました。元々自主性のある選手なので、今後の成長を期待しての指名です。佐々木はファンのみなさんからの人気がある選手です。年齢も重ねてきましたし、プレーだけでなく地域貢献をはじめとする様々な面でチームを引っ張ってほしいので指名しました」

―ここまでの鳥居キャプテンはいかがですか?

 「佐々木と二人で本当によくやってくれていると思います。人間は誰しも普通は嫌われたくないじゃないですか。それなのにしっかりと言うべきところは言ってくれていてチームに良い雰囲気をつくり出してくれていると思います。あとはシーズンが始まってから変に背負いすぎないように、キャプテンだからというマインドにならず彼らしいプレーをしてほしいですね」

―最後に今年の目標と、栃木ゴールデンブレーブスのファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

 「今年の目標はしっかりと勝って日本一を勝ち取ること、そしてみなさんが応援してくださる選手をしっかりとNPBに送り込むことの2つを目標に1年間戦っていきたいと思います。ファンのみなさん、そして支援いただいているスポンサー企業のみなさんが栃木ゴールデンブレーブスを応援していて良かったと、笑顔で過ごしてもらえるような1年にしたいと思っていますので、応援よろしくお願いいたします」

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 栃木ゴールデンブレーブスは4月8日にホームの栃木県総合運動公園野球場にて神奈川フューチャードリームスと対戦。地元選手の活躍を一目見に球場に足を運んでみてはいかがだろうか。